子どもの絵、なんで顔から手足? 「3歳前後にしか見られない貴重な作品」と専門家
4歳の娘が「ママとパパだよ」と言って見せてくれた絵。「ありがとう~!!」と言いつつ、ふと思う。「あれ? 顔から手足生えてる…」。丸い顔から手足が出た絵は、幼児の作品でよく見かけるように思うが、どうしてこのような表現になるのだろうか。専門家にたずねてみた。 【写真】思わず胸キュン! 幼児が描いた赤ちゃんを大切に抱っこしている「頭足人表現」はこちら 工作や絵など、ものづくりを通した人間形成の研究をしている同志社女子大の竹井史教授(65)=美術教育学=によると、親が「顔」と認識している丸の部分そのものが、描いた対象者を意味しているという。「『バーバパパ』をイメージしてみると分かりやすいかもしれません。丸っこいフォルムの中に顔や体もありますよね」と説明する。 竹井教授は、顔から手足が出た絵を「表現の成長過程の一つ」と指摘する。個人差があり、一概には言えないが、0、1歳ごろは短い点線やぐるぐる丸、2歳ごろは独立した丸を描くようになり、その丸を「お母さん」「先生」と表現するようになるという。顔から手足が出た絵は「頭足人(とうそくじん)表現」といい、表現の幅が広がる3歳ごろに見られるそうだ。4、5歳ごろになると、胴体を描くようになるといい、「つまり『頭足人表現』は、3歳前後の短い期間しか見られない貴重な作品。写真に残すなどして大切にしてほしい」と呼びかける。 「頭足人表現」もじっくり見てみると、子どもたちの思いが表現されているという。ある幼児が描いた、自分自身と弟か妹と思われる赤ちゃんを描いた作品。赤ちゃんを抱えるように長い手は何重にも線が描かれており、大切にしたい気持ちが伝わってくる。「胴体は描かれていないけど、今できる表現の中で、自分の大切にしたいものや言いたいことを作品に託している」と紹介する。 親の中には「胴体は描けないの?」「首は?」などと言いたくなる人もいるかもしれない。竹井教授は「『周りの子どもが描いているのに』と心配になる保護者もいるかもしれませんが、個人差があるので焦る必要は全くありません」ときっぱり。むしろ「こう描け」「ああ描け」と親が言うことは、子どもが自分から大切なものに気づいて描こうとする機会を奪うことにつながりかねない。「自らの力で花開こうとしているのに、つぼみを無理やり広げるようなもの。『できない』を嘆くのではなく、例えば『髪の毛が描けたね』というふうに、『できた』ことに目を向け、喜び合ってほしい」と話す。 大切なことは、子どもの世界を受け止め、寄り添うこと。「絵を見て『これは何しているところかな?』と関心を持って聞いたり、額に入れて飾ってあげたりすることが、子どもたちの喜びや成長につながります。ぜひ、子どもが豊かに表現できるサポートをしてあげてほしいですね」と語った。