「アルコールに頼る若者や女性が増加」コロナ禍のアルコール依存を防ぐためにできる二つのセルフチェック
「アルコール摂取の二極化」が進んでいるという。キリンホールディングスが昨年実施した調査によると、コロナ禍において、およそ1割の人が飲酒の頻度・量ともに「減少した」と答えたのに対し、およそ3割の人が飲酒の頻度・量ともに「増えた」と回答している。飲酒行動の変化の背景には何があるのか。そして、アルコール依存に陥らないために注意すべきことは何なのか。現場で精神科医として依存症患者と向き合う松本俊彦さんに話を聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
依存症は「人間くさい病気」
――松本さんは精神科医として多くの依存症患者と向き合っていらっしゃいますが、依存症の方はどういう方が多いのでしょうか。 松本俊彦: 依存症患者は不真面目で反社会的であるというイメージを抱かれやすいですが、実は非常に頑固で潔癖で自分のルールに厳しい人が多いのが現状です。「意思が弱い」とも言われますが、何度失敗しても周囲に何を言われてもやめられないというのは、視点を変えれば「意思が強い」とも言えるわけです。依存症患者と関わる中で、これまでたくさんの思い込みに自分が洗脳されてきたことに気づかされました。 ――依存症患者になりやすい人の共通点などはあるのでしょうか。 松本俊彦: 自分の意思や性格が強すぎる人、人に傷つけられてもSOSを出すことができない人が依存症に陥りやすい傾向があります。 患者さんと向き合う中で、依存症はすごく人間くさい病気だと気がつきました。依存症患者の一つの特徴として、人生が波乱万丈で最高地点と最低地点の差が激しい人が多いことが挙げられます。見栄っ張りで常に背伸びをしていて自分を1.5倍大きく見せようとしたりするけど、実はすごく寂しがり屋な人が多くて。依存症は人間くささが濃縮されて高濃度になっちゃった病気のような気がしますね。
コロナ禍でアルコール依存症が増えている理由
――コロナ禍でアルコール依存傾向になっている方が増えているという話を聞きますが、松本さんはどうお感じになっていますか。 松本俊彦: 診察室の中での肌感覚としては、もともとお酒を飲む習慣があった人は飲酒量が増え、お酒を飲む習慣がなかった人はますます飲まなくなっているという二極化が進んでいるように感じます。 お酒が増えている人は、在宅勤務やオンライン飲み会が浸透し、終電や帰りのことを気にせずにダラダラと飲み続けられる状況にあることが多いです。それがアルコール依存症の増加を助長する要因になっていると思います。またコロナ禍で、家族全員が家に篭るようになったことで、家の中がすごく密になり、もともと家庭内で葛藤があった人の場合は、ギスギスした家庭内の人間関係に適応するためにお酒を飲む人が増えていると思います。 実際に主婦の方や若年層の依存例も増えています。ご主人から命令やダメ出しされたりすることが多い夫婦関係がコロナ禍でさらにひどくなり、辛い気持ちを紛らわすために日中からお酒を飲む習慣ができてしまったという主婦の方もいました。他にも、もともと摂食障害のある20歳前後の女性で、ステイホームで家族が家にいるため過食嘔吐ができなくなり、自分の心のバランスを保つ手段としてアルコールを選択したというケースもあります。そういう方にとっては、お酒が手軽なインスタントカウンセラーのようになっているのかもしれません。