世代交代に再び挑む錦織の2016年
2016年が幕を開けた。テニスは年明けとともに新しいシーズンの始まりだ。開幕週となる今週は、ドーハ、チェンナイ、ブリスベンの3カ所で男子ツアー大会が行なわれている。錦織圭を含め、トップ8で昨シーズンを締めくくった選手のうち、非公式戦のホップマンカップに出場中のアンディ・マレーを除く7人が3大会のどこかで戦っている。錦織は昨年に続いて今年もブリスベンを開幕戦に選んだ。初戦となる2回戦に快勝してベスト8に駒を進めたところだ。 3大会ともツアーレベルでは一番格下の〈250〉のカテゴリーで、トッププレーヤーにとってはこのあとの全豪オープンに向けての肩ならしという見方もできるが、昨年この開幕3大会のそれぞれで優勝した3人……ロジャー・フェデラー、スタン・ワウリンカ、ダビド・フェレールが皆、それぞれ評価基準は異なるとしても「いいシーズン」を送ったことを考えれば、開幕ダッシュは非常に重要だ。 彼らが皆30代だということも、現在のテニス界の傾向を表している。錦織が全米オープンで準優勝した一昨年は、〈ビッグ4〉に割り込む新勢力が話題となり、昨年はその流れで世代交代の進行が注目されたが、蓋を開ければ旧勢力が盛り返してむしろ世代交代は後退した印象の一年だった。 なんといっても、グランドスラム4大会のうちの3つと、マスターズシリーズ9大会のうちの6つを制した28歳ノバク・ジョコビッチの強さが圧倒的でもあったが、世代交代の流れが進まなかったのは、昔の常識を覆す30代の健在ぶりが大きい。もちろん、一昨年は低迷していた28歳マレーの復活も無視できない。グランドスラムもマスターズシリーズも全て28歳以上がさらっていった。 錦織も彼らベテランのトップ勢について「しぶといですよね…」と漏らしたが、そのしぶとさの正体を錦織も気付いているはずだ。どれほどの実績を築いていても、より強くなろうとするモチベーション、そのためになお新しいことに挑戦する勇気……。30代も半ばに近づき、数年前からもう衰える一方だと思われたフェデラーは、ラケットを変え、コーチを変え、自身で命名した新しい戦法まで編み出した。 しぶといといえば、この人も忘れてはならない。29歳の元王者ラファエル・ナダル。ベースライン後方からのトップスピンというプレースタイルはもう時代遅れと言われたが、ツアーファイナルで復活を印象づけた彼のテニスは明らかに以前と変わっていた。ボールをとらえるタイミングを早め、よりスピーディで攻撃的なテニスに。彼らの挑戦は今年も止まらないだろう。