なぜ村岡桃佳は北京パラ”3冠”に初めて涙したのか…冬季パラ日本歴代最多となる4つ目の金メダル
北京冬季パラリンピックのアルペンスキー大回転が11日、北京北部延慶の国家アルペンセンターで行われ、前回平昌大会金メダリストの村岡桃佳(25、トヨタ自動車)が女子座位で連覇を達成。滑降とスーパー大回転に続く今大会3個目の金メダルを獲得した。 2本の合計タイムで争われるレースで、1本目で劉思トウ(27、中国)に1秒04差の2位にとどまった村岡は、2本目では全選手中で最速となる1分00秒51をマーク。合計タイムを2分2秒27として、銀メダルの劉に7秒28もの大差をつけて逆転した。 ひとつの大会で三冠を達成した日本人選手は、1998年長野大会アイススレッジスピードレース男子の武田豊、同女子のマセソン(旧姓・松江)美季に続く3人目。通算4個目の金メダルは、冬季パラリンピック史上で日本勢歴代最多となった。
「2本目で絶対に巻き返せる」
笑顔を輝かせながら頂点に立った5日の滑降、そして6日のスーパー大回転とは対照的な光景が生まれた。最終滑走者となった劉のレースを見つめていた村岡は、今大会3個目の金メダル獲得が決まった瞬間から人目をはばからずに号泣した。 フラワーセレモニーを終えた直後に応じたフラッシュインタビュー。歴史を変える偉業を達成した“冬の女王”の涙腺は、心なしかまだ緩んでいた。 「得意としている種目なので、前回大会に引き続いて絶対に金メダルを取る、という気持ちで臨んだんですけど、1本目は緊張しすぎて、体が硬くなってしまって」 気負いが滑りを微妙に狂わせた。アルペンスキー5種目のうちで最も好きと公言する大回転。本命種目の1本目で1分1秒76の2位にとどまり、トップを1分00秒72の劉に奪われた。負けず嫌いのハートに火がついた。村岡が続ける。 「でも、タイムは1秒差だったので。いつもの自分の滑りをすれば、1秒ぐらいだったら絶対に巻き返せるという気持ちで2本目に挑んで、自分のベストの限りを尽くせて、結果として圧倒的なタイム差をつけて金メダルを取れたので本当に嬉しいです」 攻めるのみと言い聞かせて臨んだ2本目を、村岡は「フルアタックをかけました」と表現した。全身全霊を込めたアタックの標的は金メダル。真に追い抜くべきは劉ではなく、不完全燃焼のうちに1本目を終えていた自分自身だった。