「光る君」衣装デザイン 手探りで決めた平安のイメージカラー 日本画家、諫山宝樹さん
主人公、まひろ(紫式部)とソウルメイト、藤原道長の絆を軸に、平安貴族の濃厚な人間模様を描いた今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」。衣装デザイン担当として美しい平安装束を現代によみがえらせ、ドラマに鮮やかな色彩を与えた。 【写真】NHK京都放送局で行われたトークショーで、衣装デザイン案を説明する諫山さん ■平安の景色「妄想」色彩生む 衣装デザインは、登場人物の年齢ごとに衣装の色合わせを考案する仕事だ。平安装束は何枚も衣を重ねるため、色の組み合わせは何通りにも及ぶ。最初の衣装合わせで約50パターンを一気に作り上げたときが最も大変な作業だったと振り返る。 NHKの連続テレビ小説「スカーレット」で主人公の女性陶芸家らに絵の指導を行ったことなどが縁となり、「光る君へ」のチーフ演出の中島由貴さんから声をかけられた。 3年前、取材で京都を訪れた中島さんから、光る君への演出を手がけていると聞いたときには「ようあんなややこしい時代に手を出しはりますわ」と、まるでひとごとだった。「そういえば諫山さん、絵描きだったよね」。この一言で突然、衣装デザインの仕事が降ってきた。歴史と文化の色濃く残る京都在住ということも決め手となったという。 「平安中期は史料が少ない上、研究者とファンの熱量はすごい。心してかからないと」。アトリエには服飾史や風俗考証など膨大な資料が並ぶが、平安時代の風俗についてはさほど詳しくない。さまざまな資料をあさった。 登場人物が多すぎるので、初期の会議で季節感は度外視し、登場人物ごとのイメージカラーを決めることから始めた。まひろのイメージカラーは紫。若い頃は薄い紫を補色にして、反対の山吹や橙(だいだい)などの明るい色を多用した。道長は、演じる柄本佑さんのイメージも考慮して青。地位が上がるとともに金の織りを入れるなど工夫した。その都度、中島さんからは「(藤原)公任はモテ男」「青ではなくて、縹色(はなだいろ)(あさぎ色より濃い色)」などと、メールで指示が飛んできた。 多い時は数百種以上にもなる無数の色合わせを作るが、どれが採用されるかは衣装合わせの写真が送られてくるまで分からない。「グラデーションを〝におい〟と呼ぶのですが、何ともすてきな響きで、キュンキュンしながら描いた」という。