団地の断熱改修、2億円の工事費「住人の新たな負担ゼロ」で! 住人主導で夏の暑さ・冬の寒さ等の悩み解決を進めた竹山団地 横浜市
約2億円の改修費は、住民の新たな持ち出し金ゼロで捻出
工事にかかる費用を見積もりしてもらうと、約2億円もの金額に。そのうち1億2000万円は、蓄えてきた修繕積立金で賄い、残りの8000万円を管理組合が金融機関から借り入れることで、住人に新たな費用負担が生じないようにしました。工事前に立てた長期修繕計画では将来的に必要になる修繕をしっかりと見込んでおり、その後も152世帯から修繕積立金を計画的に集めることができたため、当初は4年間で完済する予定だった借入金は、結局、繰上げ返済をして3年で完済できたそう。「住人の新たな持ち出し費用がゼロであることは、スムーズな合意形成にもつながった」と稲葉さんは振り返ります。
さらに、稲葉さんたち検討委員会のメンバーは、長期修繕計画を作成していたときに「住宅エコポイント制度」という補助金を活用できるかもしれない情報を入手していました。これは国の施策として省エネ法に基づく基準を満たした断熱改修を行った住宅に工事の内容に応じて、商品と交換できるポイントを支給する制度です。もともとの計画では大規模改修を2012年ごろに行う予定でしたが、この補助金を有効に活用するため、工事の予定を早めて2010年10月~2011年の2月に最上階の屋上天井と壁の外断熱工事、複層ガラスの窓サッシへの変更を実施しました。
取得した住宅エコポイントによって、当初は計画していなかったLED照明への交換や玄関扉の交換も実施できたそう。さらに翌年には、床下(基礎部分)の断熱工事も実施しました。
安定した室温で快適に変わった生活に、住人から喜びの声
竹山団地の断熱改修工事について研究していた研究者が、改修後、2月の寒い時期に1週間の室内の温度を測って室温の変化がどの程度生じるかを調べました。すると、外気温が2度前後の明け方や夕方でも18度以上が維持されていたそう。「暖房を使用していない時間帯でも、室内で最も冷える場所だと考えられる玄関でも、18度を下回ることはなかったようです」と稲葉さん。 2月の1週間、居間、北側の洋室、玄関と外気の温度と湿度の変動を調べたところ、茶色と紺色の点線で示される外気の温湿度に対し、グレー・青・水色の実線が表す室内の温湿度は暖房の使用有無にかかわらず、かなり一定に保たれていた。