団地の断熱改修、2億円の工事費「住人の新たな負担ゼロ」で! 住人主導で夏の暑さ・冬の寒さ等の悩み解決を進めた竹山団地 横浜市
「夏の暑さに耐えられない」「押し入れにカビ」積もる生活のストレス
検討委員会では「どの工事を行い、優先すべきか」の検討を進めるため、住人にアンケートを実施するなどして意見を募集しました。すると多くの人からさまざまな声が挙がったのです。 「『壁の内側の結露が激しい』『押し入れがカビだらけになっている』という話はほとんどの住人から聞かれました。とくに最上階の4階に住む人からは『夏は暑くてたまらない。エアコンを入れても全然効いている感じがしない』と必死な様子での訴えがあって」 竹山団地に限らず、全国の古い団地や集合住宅で、建物の老朽化や住人の高齢化とともに問題になっているのが、住宅性能の低さとそれに伴う生活環境の悪化です。地球温暖化などの影響で夏場の気温は年々上昇しています。断熱性能や気密性能が低い住まいでは、外の熱や湿気を十分に遮ることができず、暑さ、湿気によるカビの発生など、生活にストレスを与える現象が生じたり、住む人の健康を損ねたりすることがあります。冬場には結露が起きたり、室内の場所によって生じる寒暖差から高齢者がヒートショックを起こすなど、命の危険につながることも指摘されています。
勉強会や専門部会など、議論と検討を重ねて工事内容を決定
稲葉さんたち検討委員会のメンバーは、竹山団地に住む人の日々の暮らしにおける不快・不調・不安を改善するにはどうしたらいいのか、の答えを求めて専門家を呼んで勉強会を開くことにしました。複数の会社や有識者に話を聞きながら検討を進めていくうちに、「断熱性能」を上げることが快適な生活を送るための最優先課題だと認識します。 「勉強会を重ねる中で、これからも快適にこの団地で住み続けていくためには、大規模改修工事のなかでもとくに『断熱改修』が重要だという結論に至りました。そこで、希望者を募り、当時、外断熱改修をいち早く実施していた多摩ニュータウンにある南大沢団地を視察に行ってその快適な暮らしについて話を聞きました」 さらに断熱工事においては「外断熱」という工法が「建物全体を断熱材で覆うもので、柱の内側に断熱材を入れる内断熱と比べると気密性が高く、建物への負担が軽く、断熱の効果が高い」ことを知ります。断熱材が建物の外側と内側で熱の移動を遮断することで、快適な室温を維持することができるのです。検討委員会はまず、床・屋上・壁を外断熱工法で工事し、同時に各住戸の窓サッシを複層ガラスに変更することを決めました。