団地の断熱改修、2億円の工事費「住人の新たな負担ゼロ」で! 住人主導で夏の暑さ・冬の寒さ等の悩み解決を進めた竹山団地 横浜市
「実際に改修後、住人からは『夏のクーラーがちゃんと効くようになった』『生活のスタイルは変えていないのに冬の室内の温度が改修前より3度も上がっていた』『電気代が工事前よりもかなり安くなった』など、多くの喜びの声が聞かれました」
改修を支えた、住人主導の管理組合のあり方とは
スムーズに改修が実現した背景には、先に紹介したように住人から新たな費用の持ち出しがなかったこととあわせて、日ごろから「住人さん自身が積極的に団地の運営や環境整備・維持に関わる体制もある」と稲葉さんは説明します。 「例えば、敷地内の植栽の管理や草むしりなど、お金を払えば専門の会社に任せることは可能です。けれども私たちの団地では、有償のボランティアという形で有志を募ったりしながら草刈りなどを行っています。自分たちで手入れをすればこの場所に愛着を持ちますし、住人同士のコミュニケーションのきっかけにもなります。何より、顔を知らない会社にお金を払うより、尽力してくれる知人(住人)に払うほうがお礼の気持ちを伝えることができて嬉しいし、コストダウンにもなるんです」
花が咲く季節には、住人同士の交流を兼ねて手をかけて育てた植栽や樹木を鑑賞しながら食事をすることも。画像は2月の「梅見会」の様子。
さらに、今回の取材で稲葉さんに話を聞かせてもらった「みんなの部屋」というスペースも、住人同士がコミュニケーションをとりやすいよう、お茶菓子をつまみながら談話を楽しむ「ふれあいサロン」を実施したり、組合の会合を開いたりする場所として開設したのだそう。 「高齢化が進んで、一人暮らしの方、さらには一人で亡くなる人も増えてきたときに『みんなで助け合って暮らしていくことが必要だね』という話になりました。最初は庭にベンチを置いたりして、住人同士のコミュニケーションが図れるように考えてきましたが、やっぱり屋内のスペースが欲しいということで この『みんなの部屋』という共有スペースをつくったんです。最初はこの部屋を所有する法人から組合が借りていたのですが、2023年に買い取り、今は文字どおりみんなで運営しています」 「自分たちが快適に長く住み続けたいから、自ら学んで、住人主導で必要な修繕の計画を立てて実行する」という竹山16-2団地の管理組合法人の主体的なあり方は、団地だけではなく、もっと小規模な集合住宅や町内会などでも、住む人同士がよりよい暮らしを実現するために、欠かせない姿勢だと感じます。 実は竹山16-2団地管理組合法人の自主運営のあり方は、団地再生事業協同組合から「居住環境」「運営・経営」「コミュニティ形成」の3側面を満たす団地に与えられる「三ツ星団地」に認定されたり、団地の大規模改修工事の先進事例として国土交通省が紹介するなど、内外から評価されています。 いま住む場所を大切にしながら長く住み続けていきたい、毎日快適に暮らしたいと考えるとき、竹山16-2団地管理組合法人の取り組みを一つの好例としてぜひ参考にしてみてください。 ●取材協力 ・竹山16-2団地管理組合法人 ・竹山団地
唐松 奈津子(りんかく)