対ウクライナ過去最大支援でもなおロシア軍予算に届かず 米議会、迷走の末承認の緊急予算、長期的支援模索の動きも
米議会が半年間の迷走の末、ロシアの侵攻を受けるウクライナを支援する約608億ドル(約9兆5千億円)の緊急予算案を可決、バイデン大統領が4月24日に署名して成立した。ウクライナが苦戦する東部戦線での局面打開が期待される一方、長期的にはさらなる支援が不可避との指摘が早くも上がっている。(共同通信=太田清) 【写真】眠らせない、毎夜1時間おきに顔を懐中電灯で 100日連続でプーチン氏の演説聞かされる…「死ぬのを待つだけ」 あまりに過酷な受刑生活
▽渇望 昨年10月にホワイトハウスが緊急予算を議会に求めたが、トランプ前大統領に近い共和党保守強硬派の一部議員が、不法移民対策でメキシコとの国境警備の強化を優先させるべきだと主張。議会審議は迷走し、昨年末に予算はほぼ底をついていた。ウクライナ軍は弾薬が枯渇し、兵員・弾薬数で勝るロシアに対し劣勢に立っていた。 予算案成立を受け、米国防総省は4月24日、第1弾として10億ドルの追加軍事支援を発表した。 法案成立により、米国はウクライナの防空強化に向け、地対空ミサイルシステム「パトリオット」用のミサイルや高性能地対空ミサイルシステム「NASAMS」用弾薬のほか、携帯型の対戦車ミサイル「ジャベリン」、地対空ミサイル「スティンガー」、155ミリ砲弾などを供与する。いずれも前線のウクライナ軍や、ロシアのミサイルなどの攻撃を受けるウクライナの住民らが到着を渇望していた兵器類だ。 ▽巨額支援
外交問題を扱う米国の超党派シンクタンク「外交問題評議会」によると、ロシアのウクライナ侵攻以来、米議会が可決したウクライナ支援関連予算法案は計5法案、金額では計約1750億ドル(約27兆3千億円)に上り、支援金額の国別では米国がトップ、2位はドイツ、3位は英国。今回の608億ドルが、米国の過去の支援のうち最大だ。 1750億ドルすべてが直接ウクライナ政府に支払われたわけではなく、同政府への支出は1007億ドル。残りは供与兵器を製造した米国企業や関連組織などに支払われた。 ▽軍事支援は半分 ラトビアを拠点とする独立系ニュースサイト「ザ・インサイダー」によると、今回成立した608億ドル支援のうち、直接の軍事支援は対外有償軍事援助など約271億ドル、ウクライナへの信用供与を含めても351億ドルと、全体の半分程度だ。既に供与済みの兵器類に対する補塡などに充てられる134億ドルはここに含んでいない。残りは、巨額の財政赤字により危機的な状況にあるウクライナ国家財政への支援や避難民支援に充てられる。