対ウクライナ過去最大支援でもなおロシア軍予算に届かず 米議会、迷走の末承認の緊急予算、長期的支援模索の動きも
さらに、軍事支援のうち、戦場での現在の戦いに資する中短期的支出は緊急時の大統領在庫引き出し権に基づく117億ドルに過ぎない。 ザ・インサイダーは2024年のウクライナの国防支出について、すべて同年中に執行されるものではないものの米国からの今回の支援に加え、ウクライナ自身の国防予算約1兆2000億フリブナ(約4兆7千億円)、欧州などそのほかの支援すべてを合わせて計約1000億ドル(約15兆6千億円)になると概算した。 一方、ロシア議会が可決した24年予算案によると、同年の国防予算は10兆8000億ルーブル(約18兆6千億円)。前年比で7割近く増え予算支出全体の3割近くを占める「有事予算」だ。米国の巨額支援を受けたウクライナの国防支出をなお上回っている。なおロシアの国防予算には、使途が不透明な「国家安全保障と法執行」にかかる予算は含まれていない。 世界の紛争・兵力・軍備管理などについて分析研究しているスウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、23年時点のウクライナの軍事支出はロシアの59%だったが、欧米からの軍事支援を含めると、総計で91%にまで迫っていた。
国防費についてはもちろん、金額だけではなく、その使途や調達する兵器の性能なども鍵を握ることはもちろんだが、ザ・インサイダーはロシア国内の安価な人件費、資材、燃料などを利用できる同国軍は、欧米から兵器・資材を調達せざるを得ないウクライナよりもコスト面で有利に立っていると指摘した。 長期的にウクライナを軍事面で支えようとの動きもある。 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は4月29日、キーウ(キエフ)でのウクライナのゼレンスキー大統領との会談で、同国への長期的支援のために5年間で1000憶ユーロ(約17兆円)の基金を設立する構想について協議した。 7月のNATO首脳会議での合意を目指しているともされるが、加盟国間で負担割合などを巡って議論が難航する可能性もある。また米大統領選挙が11月に迫る中、最大の支援国である米国の政治情勢が不透明さを増していることも、合意形成に向けての不安材料だ。