売上高2.5倍の10億ドルに! ナイキ、ディズニーを革新したやり手CEOは、フェンダーをどう変えたのか?
ギターの名門ブランド、フェンダーが元気だ。2015年にアンディ・ムーニー氏がCEO(最高経営責任者)に就任したときの年間売上は4億ドル(約587億円)だったが、規模は倍増。2024年には10億ドル(約1467億円)に迫ろうとしている。 【写真】アンディ・ムーニー氏、インタビューの様子
クラプトン、ジェフ・ベック、桑田佳祐、山下達郎…世界中のギタリストが愛用するフェンダー
フェンダーには世界的なミュージシャンが憧れ、名曲を生み演奏してきた歴史を持つ。ストラトキャスターやテレキャスターをはじめ、ジャガーやマスタング、ベース・ギターではジャズベースやプレティションなど名器は多く、1960年代から今にいたるまで、多くのロック・ミュージシャンに愛されている。 エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミ・ヘンドリックス、キース・リチャーズ(ローリーング・ストーンズ)、リッチー・ブラックモア、ジョン・メイヤー……など。 日本人でも、桑田佳祐、山下達郎、Char、常田大希などが愛用している。山下はステージではデビュー以来ほぼフェンダー・テレキャスター。ライヴで毎回のように1曲目で演奏する「SPARKLE」のイントロはテレキャスターそのものの鳴りを活かしたカッティングのリフを荒々しく披露している。Charはマスタングを演奏し続けている。ライヴのクライマックスで演奏する「Smoky」では、弦を歪ませながらのソロ、間奏ではカッティングを弾きまくる。 そんなフェンダーが業績をアップさせている理由について、来日したアンディさんにインタビューした。
ナイキ、ディズニーでの実績がフェンダーの経営に活かされている
アンディさんはCEOとしてフェンダーに招かれる前、スポーツ・ブランドのナイキ、アミューズメント・パークやエンタテインメント事業を展開するディズニー・コンシューマー・プロダクツなどでCFO(最高財務責任者)やCMO(最高マーケティング責任者)としてキャリアを重ねている。 「私がフェンダーに招かれた理由は2つです。経営者としてのキャリアを評価していただいたこと。そして、ギターへの愛情と情熱です。まずは、経営者としてのキャリアについてお話しましょう。私がナイキのイギリス支社に入社したのは25歳のときでした」 アンディさんは財務のセクションに配属され、CFOの役職を得た。 「でも、当時の若かった私には財務や会計がそれほど魅力的なセクションに感じられませんでした。トップを目指すには、会社を知り、会社のつくる商品を知り抜くことが大切と判断したのです」 アンディさんはナイキの購買者を知ることから始めた。 「まずはナイキのシューズを購入し、歩き、走り、その感触を体験しました。次に、セールスのスタッフに同行して小売店に脚を運び、他社のシューズとの違いを確認しました。さらに、マラソン大会にも脚を運んでいます。ゴールしたばかりで肩で息をしているランナーに駆け寄り、ナイキのシューズのすぐれているところや改善するべき点についてインタビューを重ねました。自社商品を深く深く知ろうと務めたのです」 こうして得たデータは、開発チームに還元させた。 「CFOとして2年も経たないうちに、私に異動の辞令が告げられました。CMO、つまりマーケティングの責任者としてのポジションを得ることができたのです。これまでのキャリアで私が成功してきたとしたら、その理由の1つは成功する環境を自分の手で作り上げてきたことだと思っています」 アンディさんによると、経営側になることは、経営者で構成される業種を超えた“サロン”のメンバーになることでもある。 「各社のオーナーたちは、そのサロンにいるなかから自社のかじ取りを任せる人材を探します。だから多くの経営者がまた別の会社の経営者になり、サロンのなかで人材が流動し、キャリアをアップさせていきます」 アンディさんは、ナイキの業績に大きく貢献した。 「私が入社したときのナイキの売上は約$4億でした。辞めることには100億ドル(約14670億円)になっていました」 その功績が評価された。