日本一をつかんだ「奄美のチェフ」 アンプティサッカー、鹿実出身の隻腕GK
つえ使ってのシュート、速さに驚き
「サッカー一筋」の東にとって、アンプティはどんな競技なのか。「映像を見て、かっこいいと思ったんですよね。このチームに入ってみたいって。観戦しても、プレーしても面白いんですけど、実際にやってみて印象が変わりました。(つえを使っての)シュートが、普通の人と変わらない速さなんですよ。テクニックも衝撃でした。サッカーとは違うけど、サッカーの進化版のような。どちらかというと、フットサルに近いですね。ゲームの組み立て方、守り方。1対1、個人勝負になる場面が多いです」
サッカーとのギャップも感じている。「キックをグラウンダー中心で蹴っていたら、『ロングボールはできるだけ高く蹴ってほしい』と言われたんです。何で?って聞いたら『片脚で落下地点に入るので、余裕が欲しい』と。自分の考えとの差を、助言をもらって修正しています」 浮き球を要求したチームメートの星川誠(26)。彼も九州の名門・東海大五高校サッカー部に所属、右脚に義足を付けてプレーした経験の持ち主だ。“サッカー馬鹿”に東はどう写るのか。「相手の足の向きでシュートコースを読んだり、パスコースを読んだり。外から中に入れられたら危険な場面を判断したり。『読み』で止めてますよね。ボールへの反応もいい。サッカーをずっとやっていただけのことはあります。経験値もあるし、キックの精度、落ち着きはさすがです。あとは夜中に電話をかけてきて、『あの場面、守備の枚数は2枚か、3枚か』とか聞いてくる。『ちゃんと練習に来い』とかも言うし、熱いんですよね(笑)」
正直「ドリブルしたい」
アンプティの練習と平行して、社会人サッカーでのプレーも続ける東。ルール上、ペナルティエリア内に縛られるGKだとストレスがたまるのでは、とぶつけてみた。「ドリブルしたい。正直ありますよ。でも、GKも面白いっす。自分が入れられなければ負けない。自分が勝負を分ける、プレッシャーをかけられますし。日本代表に入る目標もありますし。アンプティのGKは攻撃面での貢献も大きいです。自分にしかできない良さ、持っているものを生かしたい」 10月1、2日に富士通スタジアム川崎(川崎市)で開かれる第6回日本選手権に、初めて前回王者として臨む。「前回の日本選手権や大阪の大会では、準決勝も決勝も接戦だった。もっとチームとして差をつけて優勝したい。絶対的王者になりたい」。自分への重圧をかけるかのように、他クラブを上から見下ろした。挑発的に写るほどの勝利への欲求。プレーから目が離せない。