なぜ阪神は横浜DeNAを3タテできたのか
中野の優れた点は、その打撃だ。タイミングを取るために上げた右足をステップする際、その位置がほぼぶれない。どんなボールに対してもつっこまず開くこともない。バットの振り出しも小さくてコンパクト。そして軸で回って打つ。その回転力が強く早いため、詰まっても打球が、ヒットゾーンに落ちる。「正直、当たりがよくなかった」というタイムリーが、その典型だ。欲を出すこともなく、自分の特長をわきまえている。 加えて守備もいい。昨年まで2軍チーフコーチを務めていた評論家の高代延博氏も「ショートとしては木浪より上手い。スピードがあって一歩目が速いからボールを捕球するためのラインに入るのが速い」と評価していた。前日のゲームでは、7回二死一、三塁のピンチで、極端にセカンドベース寄りを守るポジショニングで、戸柱のセンターへ抜けてもおかしくないライナーを好捕して同点を防いでいる。 チームの打率.254は広島の.256に若干届かずリーグ2位だが、同得点65はトップで、同得点圏打率は3割に近い。課題だった得点力のアップが実現できている。その理由のひとつが、糸原、サンズが好調で不動のラインナップを組めていることと、得点圏へ進めるバントにミスが少ないことだろう。1番から5番までの打順を15試合で変えていないのは、阪神だけだ。 矢野監督の9回打ち切りを念頭に置いた仕掛けの早さも目に付く。イニング途中の投手交代には、後から出てくる投手の適性や準備が難しいことから危険を伴うが、それをプラスに転じている。 この日も、ガンケルを7回のマウンドに上げて宮崎一人だけに投げさせて、関根、倉本、戸柱と左打者が続く打順で岩貞にスイッチした。ただ、“8回の男”岩崎は、まだ連投がきかないのか、この日の調子は、決してよくはなかった。8回に1点を失い、さらに一死一、三塁のピンチを作ったが、宮崎が2-0から、併殺を誘った外のチェンジアップに引っかかってくれた。宮崎に状況を頭に入れられ、ゾーンの目付をしっかりと固められていれば、同点やむなしという局面だった。そして防御率0.00のスアレスの存在がある。この日も1点差で横浜DeNAの下位打線をまるで鼻であしらった。 対戦カードの巡り合わせもいい。新型コロナの陽性反応でメンバーの揃わない巨人を叩き、横浜DeNAも、この日、1軍に合流したソトとオースティンを登録しなかった。