なぜ阪神は横浜DeNAを3タテできたのか
元阪神の名手、大和がランニングスローではあったが、彼の守備能力をすれば、なんてことのない打球処理で雑に送球。ジャンプした一塁手の牧のグラブが届かない。痛恨のタイムリーエラーである。 三浦監督は5回に倉本を代打に送り大和をベンチに引っ込めた。「流れを変えるために」と説明したが、懲罰交代の意味合いもあるのだろう。まるで昨年までの阪神を見ているようだった。 ここまでの11勝はすべて先制して主導権を握っている。ここまで15試合で先発が5回を持たなかった試合はひとつもない。藤浪がカード初戦で勝ったことでローテー6人全員に早くも勝ち星がついた。チームOS率は実に80%である。この先発陣の安定と先取点は無縁ではない。先取点がひとつの免罪符となって投手心理に余裕を持たせる。 ガンケルは4回一死から新人の牧に反対方向に4号ソロを打たれたが、テンポのいいピッチングでリードを守った。7回に宮崎を三塁ゴロに打ちとったところでお役御免となったが、3安打4奪三振1四球のピッチングでゲームを作った。 新戦力が躍動した。4回。注目の黄金ルーキーの佐藤が目の覚める強烈なライナーで右中間を破った。先頭打者として価値ある二塁打。弱点のインハイを執拗に攻められたが、釣り球には手を出さずフルカウントから真ん中に来た149キロの失投を仕留めた。見極めという点で進歩がある。梅野が絶妙にバントを決めて一死三塁にすると、2試合連続で「8番・ショート」のスタメン抜擢をうけたドラフト6位の中野が、インサイドのボールにつまりながら、しっかり振り切ったことで、打球をレフト線に落とした。プロ初タイムリー。新人2人で奪った貴重な1点が結果的に決勝点となった。 矢野監督は「8番・ショート」のポジションだけを右腕なら木浪、左腕なら山本と使い分けてきたが、9日に1イニング2つの失策を木浪が犯していたこともきっかけになり、思い切って中野を使ったが、この采配がズバリ的中した。選手層を厚くすると同時に昨年までの阪神に欠けていた競争意識がチーム内に生まれつつある。 中野は第4打席にもセンター前ヒットをマークして猛打賞。プロ初のヒーローインタビューに呼ばれると、誠実に言葉を選びながら、「スタメンチャンスをいただいたので、なんとしてもモノにしようと強い気持ちを持って臨みました」と思いを伝えた。 短い問答で3度「強い気持ち」という言葉を使った。それが中野の心得なのだろう。