“Jリーグ最強の企画屋“に聞く「地域とスポーツのしあわせな関係」(下)
スポーツ界全体にとってのプラスに
大枝 クリスマスに小児病棟などに選手が訪問する「ブルーサンタ」の活動はいつからやっているんでしょうか。 天野 97年の1年目からやっています。最初は寄せ集めのチームだったので、めちゃめちゃ大変だったんです。その中で、中西哲生さんは僕の言うことを分かってくれて、率先してやってくれた。そうすると、若手がついてきてくれて。 ただサンタになって誰かの家にプレゼントを届けるんじゃなくて、小児病棟に行って社会貢献する。それをとにかく1年目からやるっていうことが、誇れることになると思って、僕は絶対やると決めていたんです。 大枝 子どもたちに算数のドリルも配っていますね。 天野 川崎市は小学6年生が1万4,800人いるんですけど、川崎市と折半して予算化してもらって、配っています。最近小学校で講義することも多いのですが、フロンターレに興味のある女の子は少ないわけです。いいイメージをフロンターレに付けようと。その年に試合を観に来てくれなくても、大人になって、子どもが生まれた時に、「小さい時にフロンターレの算数ドリルで勉強したなあ」と思ってもらえれば。クラブにいいイメージを持ってもらえるかというのがすごく大きいんです。川崎にずっと住むわけじゃなくても、ほかの町に行ったときに、スポーツ自体にいいイメージを持ってもらえれば、そこの町のチームを応援してもらえれば、スポーツ界にとってもプラスになることなので。 大枝 選手が実際に、毎年小学校に授業に行くんですね。 天野 体育でサッカーをやるっていうのは当たり前すぎるので、算数の授業で行くと。 大枝 憲剛選手のシュートは何キロで、私は何キロでと。スピードガンで速さを測ったり。選手も一生懸命その場で計算するんですね。 天野 みんな分かってないですけどね。難しいんですよ小学6年生の算数って(笑)。こうやって毎年やってると、必ず一般紙が取り上げますから。そうするとフロンターレが毎年こういうことやってるって、昨年見てなかった人にも知ってもらえるんです。選手が学校に体育で行った、というだけだとそうはいかない。 大枝 (写真参照)ブラジル人選手がノリノリで手を挙げてますね。 天野 昨年、川崎区の旭町小学校で、最初は生徒たちがいないところで撮ったんだけど、なんかつまんないなと思って、授業中の先生に「ちょっと中入っていいですか」って言って、「手挙げろー」って言って。面白くないですか(笑)。 大枝 すごい楽しそうですね。 天野 めっちゃ楽しいですよ。小学生もけらっけら笑ってたしね。家に帰ったら絶対、「なんか名前知らないけどフロンターレの外国人選手が横に来て手挙げてた」って親に言いますよね。インパクトが残る。そこでちょっと距離が縮まる、そういうことの積み重ねですね。 大枝 Jリーグスタジアム観戦者調査でも、子どもの割合が高いですね。 天野 本当に狙い通りでうれしいですね。