“Jリーグ最強の企画屋“に聞く「地域とスポーツのしあわせな関係」(下)
川崎フロンターレのプロモーション部長として数々の話題を提供してきた天野春果さん。横浜で開催されたイベント後半では、復興支援や教育の取り組みについても伺った。 ※上はこちら
予定調和なことは絶対しない
大枝 市民からすると、今度の土曜日どうしようかな、マリノスの試合に行こうかフロンターレの試合に行こうか、とは悩まないですよね。映画を観ようかディズニーランドに行こうか、サッカー観ようかなと悩む。その中で選んでもらわないといけないですよね。 天野 神奈川も近隣もJリーグのクラブは多いですけど、全然気にならないです。ロンドンなんか20くらいありますし。週末になると、いろんなユニホームの人が地下鉄に乗ってるんですよね。川崎は149万人都市だし、ここの密度を濃くしていけばいい。それよりも気になるのは、横浜だったら、みなとみらいとか、万葉の湯とか(笑)、ああいうところが気になります。チラシとか見ちゃいますもん、こんなことやってるんだって。 大枝 お風呂屋さんとのプロモーションもありましたしね。(※2010年から川崎浴場組合連合会とコラボレーションしたキャンペーンを実施) 天野 かっこよく言うと、イメージを作っていく、クラブのブランディングですね。「何か面白いことを常にやっているクラブ」というブランディングをしていくためには、毎年毎年奇抜なことを積み重ねていって、それをクラブ内でも浸透させる。そういうのが噂になっていくんですね。 大枝 宇宙兄弟の2人がフロンターレのユニ着るとか有り得ないでしょって漫画のファンは思いますよね。 天野 みんなが考えている以上のことをやらないと、そこに驚きはないし、興味関心、話題は生まれないから、一般的に思い浮かぶことはまずやらない、そこが第一前提。予定調和なことは絶対しない。そこは前監督と一緒です。 大枝 宇宙ステーションと交信というのも。 天野 スタジアムでやったというのは今までないと聞いた時に、絶対フロンターレでやってやろうと思ったんです。当日はすごい雨でしたが、(中村)憲剛は本当にいい奴なんですよ(笑)。コスプレイヤーとして、何でも着て、何でも協力してくれる。ただ、ちゃんと目的を聞いて、自分の中で消化しないとやらないんです。だから、僕もなあなあではやらないですし、話し方も気を付けます。オフロンスキー(※NHKの番組『みいつけた!』とコラボレーションした中村憲剛選手のキャラクター)も、本人ちゃんと納得してやってるんですよ。子どもが小さいので、お父さんが憧れられるっていうのもあったんでしょうけど、しっかりそこから生まれる効果を考える。そこはすごい緊張感がありますね。 大枝 フロンターレの選手は、キワモノっぽいことも喜んでくれてる人が多いですよね。 天野 それが積み重ねで文化になってきているんですよ。もう、フロンターレ=バナナみたいになってますしね。(※パートナー企業のドールがイベント時などにバナナを提供) 大枝 新入団の選手は、バナナかぶるのかって必ず話題になりますね。 天野 家長(昭博)ね。家長は、最初相当心配だったので、いろんな選手から情報を集めてたら、結構みんな「気さくだよ」って。実際、ソッコーかぶってましたね。家長は来るべくして来ましたね。大久保嘉人もそうですが(笑)。あれは活躍しますよ絶対。 大枝 選手の間でも、「フロンターレ行くとあれかぶるぞ」みたいな。 天野 今はもう定着していて、ハイネルだけでしたね知らなかったの。これがステータスみたいになってますよね。 大枝 かぶったぞって写真が出ると、みんなが「ようこそフロンターレへ」って言いますよね。チームが紹介するんじゃなくて、市民が「ようこそ」っていう。 天野 そういうチームのカラーに賛同した人が最終的には残りますよね。僕はフロンターレのそういう温かい部分は、すごく大事だと思っています。選手もバナナをかぶった後ならなんでもかぶれますからね。家長もこれからばんばんいきますから(笑)。