日本人の「新築信仰」は過去のもの?割安感のある“築深マンション”を購入する人が増えているワケ
新築マンション価格が高くなり過ぎていることもあり、安い中古マンションへの注目度が高まっている。竣工後の年数が短い“築浅マンション”は、新築マンション以上に価格が高騰しているが、一方で築年数の長い“築深マンション”は割安感が強まっており、それを積極的に評価して購入する人も増えている。最近の中古マンション事情について、住宅ジャーナリストの山下和之氏が解説する。 「手頃な価格だったから」のほかに中古住宅を購入した人の理由は?(アンケート調査) ■ 今や“築浅マンション”の価格は新築より高騰している! 新築マンションの発売戸数が急減している。かつては首都圏での年間発売戸数が10万戸近かったが、年々減って2010年代には3万戸台に減少し、2023年度には2万6000戸台まで減っている。 なぜなら、マンション適地の土地取得が極めて難しくなっているうえ、商業施設やホテルなどとの競合が激しくなっているからだ。簡単には落札できない状況となっているため、ますますマンションの発売戸数は減ってしまいそうな情勢だ。 それだけに、建築後の経過年数が短い、いわゆる“築浅マンション”の希少性が高まり、新築分譲が激減しているエリアでは、新築マンション相場より高い価格で取引される中古マンションも増えている。 【グラフ1】にあるように、2024年度第3四半期の首都圏新築マンションの平均坪単価(3.3m2 換算)が416.7万円なのに対して、築5年以内のマンションは489.9万円となっており、築浅のほうが格段に高くなっている。1年前の平均価格と比べても、新築は4.2%の下落に対して、築5年以内は15.6%も上がっているのだ。 本来、中古マンションは新築マンションより安く手に入るのが大きなメリットのため、高くなり過ぎた築浅マンションは割安感を享受できず、もはや中古マンションとは言えない物件となっている。
■ 希望エリアで物件を見つけやすい“築深マンション” だが、中古には価格以外のメリットもあり、それが中古マンション価格を押し上げる要因にもなっている。そこで、実際に中古マンションを買った人たちが、なぜ新築ではなく中古を選んだのかをアンケートした結果が【グラフ2】だ。 中古住宅を選んだ理由としては、2位に「手頃な価格だったから」(60.1%)が入っていて、やはり価格の安さが大きなポイントになっているのは間違いないが、実はそれ以上に「希望エリアの物件だったから」(71.4%)がトップに挙がっており、10ポイント以上の差がついている。 特に、近年は新築マンションが激減し、希望するエリアに新築マンションが建設されにくくなっている。年に1棟出てくればいい方で、何年も出てこない人気エリアも少なくない。それに対して、中古マンションならいつでもどこでも物件を探すことができ、複数の物件の中から選択できるケースもある。 もちろん、中古マンションの価格のメリットがなくなったわけではない。築浅は新築より高い状況にあるものの、ある程度の経過年数がたった物件ならば、価格の安さのメリットを享受できるようになる。 前出の【グラフ1】にあるように、築10年までは新築マンション並みかそれ以上の坪単価になっているが、築10年を超えて築20年以内になると、400万円台から300万円台に下がり、築20年を超えて築30年以内では200万円台に、そして築30年超では100万円台にまで低下する。 築20年超30年以内なら新築や築浅の半額、築30年超なら3分の1ほどで手に入れられる計算だ。 しかも、注目しておきたいのは、【グラフ1】の折れ線グラフのカーブを見ても分かるように、築浅は右肩上がりに高騰しているものの、築年数の長いマンションは、このところ横ばいから右肩下がりで買いやすくなっている。 つまり、ある程度の経過年数がたった中古マンションなら、希望エリアで物件を見つけやすく、かつ割安感を享受できるわけだ。 さらに、中古マンションのメリットとしては、早く入居できるという点も見逃せない。大規模な新築マンションだと、売り出しから竣工・引き渡しまで1、2年以上かかる事例もあるが、中古だと契約すれば3カ月以内に入居できるのが原則だ。