日本人の「新築信仰」は過去のもの?割安感のある“築深マンション”を購入する人が増えているワケ
■ 築30年超のマンションでも新耐震基準で施工された物件が多い 経過年数の長い“築深マンション”になると、住宅の耐久性に不安が残り、居住性能も悪くなっているのではないかと不安になるかもしれないが、最近は築深マンションでも品質が低下しにくくなっている。 何より心配されるのは、築年数が長くなると、耐震性が弱いのではないかという点だが、新耐震基準が施行されたのは1981年なので、築30年超でも、築40年前後までは新耐震基準のもとで建設されていることになる。 新耐震基準というのは、「震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6強から7に達する程度の大規模地震でも倒壊は免れる」ことが条件となっているため、まずは安心だ。新耐震基準施行前に建設されたマンションの中にも、新耐震基準以上の耐震性能で建てられているマンションが少なくない。 また、築深マンションの中には、建築後に耐震補強しているマンションもあり、むしろ安全性が向上している物件も多い。 居住性能に関しても、最近はリフォーム技術が進化しているので、購入後にリフォームすれば、最新の新築マンションに近いレベルを確保できるようになっている。 とはいえ、住宅としての性能については、建築知識の乏しい素人では見極めは簡単ではないので、まずは実際に複数の物件を見て、選択眼を養うようにしたい。マイホームの購入は今後の暮らしを左右する大きな買い物なのだから、それぐらいの努力はしたいところだ。
■ 築深マンションはインスペクションを依頼すると安心 では、築深マンションを選ぶ際、具体的にどんな点をチェックすればいいのか。 まず共用部分については、外壁や共用廊下などの外観にひび割れや亀裂が入っていないか、個別住戸のチェックでは、内壁に雨漏りの跡がないかなど、目につく範囲で建物の内容をチェックしたい。 また、マンションは管理面も重要なので、管理員は常駐しているか、ゴミ置き場や駐輪場などはきちんと清掃されているかなどを自分の目で確認したい。管理のレベルと共に、住んでいる人たちのマナーレベルなどもある程度把握できるはずだ。 駐車場や駐輪場では、どんなクルマや自転車が停められているのかを見れば、住んでいる人たちの年代やライフステージ、ライフスタイルなどをうかがい知ることができる。例えば、チャイルドシート付きの自転車が多ければ、子育て世帯が多いと推察されるし、チャイルドシートが荷物置き場になっているようなら、子育てを卒業した世帯が中心かもしれない。 さらに物件の見学時に、管理員や管理会社などを通して大規模修繕の実施状況や修繕積立金の余裕度なども聞き取ることができれば、なお安心だ。 そのように実際に自分の目で物件を見ることが何より納得感、安心感につながるが、そうは言っても、専門家に物件を査定してもらって判断したいと考える人も多いだろう。最近は、建物検査、いわゆるインスペクションを実施している建築事務所が増えており、インターネットなどでも依頼先を検索できる。 しかし、マンションにおいてはインスペクションの実施率はさほど高くないのが現実だ。【グラフ3】にあるように、あらかじめ売り主がインスペクションを実施している物件はわずか1割強しかなく、何もしていない物件が8割を超えている。 自分でインスペクションを依頼すると数万円程度の費用がかかるが、マイホームの購入は大きな投資なのだから、それぐらいの費用はかけてもいいのではないだろうか。本当に気に入った物件が見つかって購入したいとなれば、売り主に了解をとって、インスペクションを依頼した方が安心だ。