「墓じまい」「仏壇じまい」変化するお墓事情 多様化する「弔いのカタチ」#令和の親 #令和の子
お盆と言えば故郷に帰ってお墓参りをする――。そんな日本古来の風習が過去のものになるかもしれません。すでにお墓や納骨堂に納めた遺骨を他のお墓や納骨堂に移す「改葬」や墓石を撤去する「墓じまい」が増えています。厚生労働省の調査によると、「改葬」が2022年度、全国で15万1,076件にのぼり、過去最多に。墓じまいや改葬の背景には「お墓が遠方にある」ことや「継承者がいない」ことが挙げられ、樹木葬や海洋葬・山葬(散骨)などの選択肢も広がっています。平成から令和に変わり、お墓や弔いのカタチはどんなふうに変化しているのでしょうか? また、その背景にある社会や時代、人々の死生観の変化とは? 多様化する「令和の弔いのカタチ」について取材しました。 【早見表】年金に頼らず「1人で120歳まで生きる」ための貯蓄額
墓じまいと同時に仏壇じまいも…変化するお墓事情
日本最大級のお墓に関するポータルサイト「いいお墓」をはじめ「終活」に関する事業を展開する「鎌倉新書」(東京都中央区)が今年1月に実施した調査によると、墓じまいの検討経験や実施経験がある人に墓じまいの検討理由について聞いたところ、最も多かった理由は「お墓が遠方にある」で、次いで多かったのが「お墓の継承者がいない」でした。* 2020年にがんで母親(享年73歳)を亡くしたという東京都内在住の藤原翔子(ふじわら・しょうこ)さん(42歳・仮名)は「私が小さい頃に父と離婚して女手一つでバリバリ働きながら私と兄を育ててくれた母は『とにかく子どもたちに迷惑をかけたくない』という思いで、生前から入念な準備をしていました」と振り返ります。 「母にがんが見つかったのは亡くなる2年位前で、気づいたときには末期の状態でした。人間ドックも区の健康診断も受診していたのに、ある時、咳が止まらず『おかしい』と思って病院で見てもらったらすでに手遅れでした。母の実家は千葉県にあったのですが、そこのお墓に入っても子どもたちが来づらいだろうからと言って、港区の霊園にある樹木葬を決めていました。そこなら家にも近いし、通勤途中でフラッと寄れるだろうと。お葬式に関しても『誰も呼ばなくてよいから家族葬で』と言われていていたのですが、それでもということで母の携帯電話から親しい人に連絡してこぢんまりと葬儀を行いました」 「いいお墓」が、同サイトを通じてお墓を購入した人に購入したお墓の種類を聞いたところ、「樹木葬」が48.2%**で前回の調査に引き続き、約半数を占めました。 同社の「お墓・仏壇事業部」部長・太島悠輔(おおしま・ゆうすけ)さんによると最近のお墓のトレンドについて、「お墓も継承者不要や跡継ぎ不要のお墓を希望される方が増えています。また、お墓の形も従来のいわゆる『お墓』と言ったときに皆さんがイメージされる『和型』のお墓ではなくて、1平米を切るような小型のお墓が増えています。それと同時に仏壇も小型化していて実家にあるような大きな仏壇ではなくて小さなスタイリッシュな仏壇も。また、仏壇じまいも増えていて、手元供養と言って故人の遺骨や遺灰の一部をペンダントやアクセサリーに納めて持ったりする人も多くいらっしゃいます」と説明します。 藤原さんも「仏壇は母の趣味らしいオシャレでスタイリッシュなものをネットで購入しました。位牌(いはい)もガラス製です。今では息子たちが学校で作った工作や賞状も飾ってあってもはや何なのかわからないのですが、にぎやかで母も喜んでいるんじゃないかなと思っています」と笑いました。