フランス新首相の就任はEU瓦解への前奏曲だ
■民主主義が瓦解しているEU ところが、その民主主義がEU内で足下から崩れつつあるのだ。では各国の政権党のみならず、EUを動かしているものは何なのか。それがグローバリゼーションと新自由主義である。そしてそれが、EU内での経済停滞の深刻さと相まって、各国の国民の不満を引き出しているのである。 NATOはEUだけのものではない。EUは政治的には独立していても、軍事的にはNATOに従属している。防衛という点で見れば、判断はEUだけでなくNATOに握られているといってよい。
EUの各国民は、EUという超国家的な機構によって主権を奪われているだけでなく、NATOという軍事機構によって主権を奪われているともいえる。 NATOは、西側諸国の軍事機構である。その機構は西側の資本主義経済を守る軍事機構であるといってよい。それが民主主義の拡大と称して、世界に侵攻する限り、それ以外の諸国との摩擦と戦争は避けられない。 そうなると、各国の国民には、もはやこの戦争は止められないのではないかという不安がよぎる。戦争を遂行し続けるものは、国民の上、さらにはEUの上にある機構であれば、この戦争は資本主義経済、西側経済を守るための、国民不在の永久戦争ということにもなりかねない。
しかもその戦争を正当化するスローガンが「民主主義を守る」ためというのだから、ブラックユーモアとしかいいようのない現状なのである。
的場 昭弘 :神奈川大学 名誉教授