新首相・石破茂が<野党>に期待すること。「野党自民党には迫力があったが、最近の野党は元気がない。与野党はお互いを高め合う関係であるべきで…」
2024年10月27日、第50回衆議院議員総選挙の投開票が行われました。今後の政治情勢に注目が集まるなか、10月1日に第102代内閣総理大臣に指名された石破茂首相は、現在の世論について「政治改革に寄せる社会の期待感は、明らかに落ちている印象」と語っていて――。そこで今回は、石破首相が自民党総裁選に先駆けて綴った著書『保守政治家 わが政策、わが天命』より一部引用、再編集してお届けします。 【写真】「野党の背後にいる主権者へのリスペクトが次第になくなってしまう。これが最も恐ろしい」と語る石破首相 * * * * * * * ◆野党がダメだと与党もダメになる 政治が信頼を失った背景として、野党の皆さんの元気のなさは挙げざるをえません。 与野党関係というのは、できるだけお互いに高め合わなければならない関係ですが、今はいわばお互いに低め合うような状況だと思います。 特に、野党第一党の立憲民主党には、もっと堂々としていてほしい。 「立憲共産党」と言われただけで、「もう共産党には近づきません」みたいな反応をしていますが、「どこが立憲共産党なんですか。私たちは自衛隊廃止とか天皇制廃止とは言わない。党としては全く違う。それでも、今の政治を変えるためには共産党との協力が必要なんです」と言えばいいと思うのです。 野党がダメだとやがて与党もダメになります。野党の背後にいる主権者へのリスペクトが次第になくなってしまう。これが最も恐ろしいことではないでしょうか。 野党が弱く、「自民党」という旗と風だけで勝ててしまったら、地元で5人、10人を集めて小会合を開くことで、一票一票拾っていくという、民主主義の根本であるグラスルーツ(草の根)的活動をすることにも意味を見出せなくなります。
◆最近の野党について感じること 私は衆院予算委員会の委員を務めていました。テレビの国会中継では、いつも質問者の後ろに映っているのが見えたと思います。 別に映りたいと思っているわけではなく、「あいうえお順」でたまさか私の席がそこにある、というだけの話なのですが、国会で晴れ舞台といわれる予算委員会の審議を長年聞き続けてきた議員の一人であることは間違いありません。 その私から見て、最近の野党について、感じることを率直に申し上げます。 まずは、野党らしさが失われている。国民からの批判を恐れてか、「対決より解決」「提案型」にこだわり、まるで与党議員の発言のようで、野党としての存在意義が感じられないことが多くなっています。 対する閣僚が事務方の用意した答弁をそのまま読み上げても、二の矢、三の矢で議論が深まることも滅多にありません。 「丁寧なご答弁をいただきありがとうございます。時間もないので次の質問に移ります」とあっさり引き下がる人が多いことにも驚かされます。 予算委の質疑を聞いていてもう一つ気になるのは、最初から各論を問う場面が多いことです。つまり、大きな問い、本質的な議論に挑むというより、細かい政策についての話が多い。 しかし、各論では政府にかなうはずがないのです。持っている情報量も圧倒的に多いし、細かい政策の話だと選択の幅が狭くなるので、野党が大きな違いを示すことはとても難しい。野党議員には、現実政治に責任を持つ与党にはできないような大局的、かつ根源的な議論をしてほしいのです。 例えば経済政策。この10年続けてきたアベノミクスの検証を広範に提起する。これはなかなか政府与党にできるものではありません。野党だからこそ問いかけられることです。 立憲民主党はアベノミクスの検証報告書なるものを作ったはずですから、それを党を挙げてあらゆる質疑に活用し、政府与党の襟を正させるような問題提起をしてほしい。