「人間の役に立つ」はずが、害虫扱い! 憐れなセイヨウオオマルハナバチ
人間のために導入された外来種が、野生化すると駆逐対象に
国立環境研究所では、現在、この課題に対して、有効かつ安全に殺虫剤を活用できないかと考え、化学的防除手法の開発を進めています。考えてみれば、同じハチ目昆虫のアリ類については、アルゼンチンアリという外来アリ個体群に対して有効な薬剤防除手法が開発されています。アリの場合は、ベイト剤という殺虫成分を含む餌を働き蟻に巣に持ち帰らせて巣内の幼虫や女王に給餌することで増殖を停止させて最終的に巣を崩壊させるという手法をとります。 同様の社会性コロニーをつくるハチに対してもアリと同じメカニズムで防除することができるかもしれません。ただし、北海道という自然エリアで防除を実行するには、セイヨウオオマルハナバチだけに標的を絞った薬剤や処理方法を選定する必要があります。技術開発はいまも続けられています。 セイヨウオオマルハナバチのように意図的に導入された外来生物は、ほかにもたくさんいます。北米原産のオオクチバスは食用目的で、アジア原産のマングースは沖縄・奄美のハブ退治目的で、北米原産のアライグマは、ペット目的で輸入されました。 いずれも「人間の役に立つ」という名目で導入された生物でしたが、いまや一級の有害外来生物として、外来生物法で特定外来生物に指定されており、彼らもまた野生化した個体については駆除対象となっています。 外来生物の彼らに非がある訳ではなく、導入してしまった人間に非がある……。しかし、外来生物の被害を被る相手が生物多様性だと、人間もその「非」を実感できないのか、いまでも新たな外国産の動植物が観賞用・産業用として大量に導入され続けています。 (国立研究開発法人国立環境研究所・侵入生物研究チーム 五箇公一)