「野球カステラ」を絶滅から守りたい! 熱すぎる神戸市職員に密着
◆ 活動が実を結び…「若手職人」が店をオープン
今年、志方さんの活動のひとつ「焼き型バンク」が大きな実を結んだ。「手焼き煎餅 えみり堂」(神戸市兵庫区)が、焼き型バンクを利用して3月13日にオープンしたのだ。 焼き型バンクは、閉業した店から引き継いだ道具やアンティークショップなどで集めた焼き型を、神戸煎餅協会の協力のもと、新たに店を立ち上げる若い職人に無償で貸し出す活動だ。 「えみり堂」店主の和田絵三子さんは、「新品の焼き型は40万円くらいになるから、300円ほどの野球カステラを売ってでは30年続けたとしてもわりが合わない。でも焼き型バンクを利用することで、お店をオープンすることができます」と話していた。 「えみり堂」の開店はうれしいニュースだったが、新たに修行している人はいないうえに、70歳以上の職人さんたちの引退が迫っている。「みんな引退されて道具だけが集まったら、道具を保管している私の部屋の床が抜けるかも」と笑う志方さんは、あえて目標は設定していないと話す。それでも「今いる職人さんたちに少しでも長く野球カステラを焼いてもらって、『えみり堂』のように新しくオープンする職人さんが現れてくれたら」と胸の内を明かした。 取材・文・写真/太田浩子