躍進を続ける“格安スマホ”、どうして破格の値段で提供できるの?
成熟期を迎えた携帯電話市場において、いま“格安SIM”、“格安スマホ”といったキャッチコピーでサービスを提供する「MVNO(仮想移動体通信事業者)」が大きな注目を集めています。最近では、LINEが自社ブランドの携帯電話サービス「LINEモバイル」を開始することを発表したほか、大手家電量販店ではMVNOの専用コーナーができるほどに。今回は、そのMVNOがなぜ大手通信キャリアよりも破格の通信料でサービスを提供できるのかを探ります。
MVNO最大の武器は、通信料の安さ
まずは簡単に、MVNOとは何かをおさらいしておきましょう。MVNOとは、NTTドコモをはじめとした大手携帯電話キャリアが敷設した携帯電話通信網を借りて、独自のブランドで携帯電話サービスを提供する事業者のことを言います。今ではOCNやニフティといった大手のインターネットプロバイダー、DMMや楽天といったインターネット事業会社などがこぞって参入していますが、これらの事業者は独自に通信網を作っているのではなく、大手キャリアの通信網を借り、そこに独自のサービスをアドオンした上でサービスを提供しているのです。 そして、MVNO最大の武器となっているのは、その通信料金の安さです。例えば、大手キャリアの一般的な料金モデルを元に試算すると、毎月の通信料金は、通話定額制の基本料金(2700円)、5GBのパケット定額料金(5000円)、ISP基本料金(300円)を合計して8000円ほど。これに対してMVNOの多くでは、通話プランの基本料金と5GB分のデータ通信料金がセットになった料金プランが2000円から2500円程度に設定されています(通話料金は従量制)。こうした基本料金だけで比較すると、大手キャリアとMVNOの通信料金には毎月5000円以上の差が生まれ、長期的にみると大きな節約になるのです。 こうしたコストパフォーマンスの良さや、昨年から大手キャリアの端末でSIMロックの解除が義務化されたことなどを背景に、MVNOの利用者数は急激に増加しています。総務省がまとめた2015年12月末時点での携帯電話契約者数のデータによると、MVNOの契約者数は1155万件と前年比29%の増加に。サービスを提供するMVNO事業者も初めて200社を超え、大手通信キャリア3社の成長が鈍化している中、MVNOの分野だけが大きな成長を遂げている状況なのです。