躍進を続ける“格安スマホ”、どうして破格の値段で提供できるの?
なぜMVNOは安さを実現できているのか
ではどうして、MVNOはこうした安さを提供することができるのでしょうか。MVNO大手の楽天モバイルの広報に取材したところ、大手キャリアの価格設定については断定的なことは述べられないとした上で、「設備投資費や店舗人件費、販売促進費などで違いがあるからではないか」と語っています。 確かに、設備投資費の有無はMVNOが安さを実現する上で大きなポイントです。例えば、NTTドコモの2015年度通期決算を見てみると、LTE通信網に対する年間の設備投資費は3654億円。2016年度も3390億円となる見通しで、巨額の設備投資によって安定した通信サービスを契約者に提供する一方、その設備投資費は契約者からの通信料金で賄う必要があります。しかし、MVNOではこうした大手キャリアが整備した通信インフラを借りてサービスを提供するため、その回線利用料以上に通信インフラに設備投資をする必要がありません。そのため、通信料金も低く設定できるのです。 ただしこの点については、裏を返せばMVNOが低価格で携帯電話サービスが提供できているのは、大手キャリアが巨額の設備投資費を投入して通信インフラを整備しているからであり、この投資がなければMVNOのビジネスモデルは成り立たないとも言えます。その観点から、MVNOの普及による通信料金の低コスト化に大手キャリアが果たす役割は、非常に大きなものだと言えるでしょう。 続いて、MVNOの料金に話を戻すと、店舗人件費と販売促進費も大きなポイントだと言えます。大手キャリアは全国にオフィシャルショップを展開して契約者にサービスを提供していますが、MVNOの場合はインターネット通販を主要な販売チャネルにしているほか、リアル店舗を展開している場合でも大都市などに限り、多くの場合は大手家電量販店などに専用コーナーを設置するなど「ショップインショップ」の形態をとることで、店舗維持費や人件費といった販売コストを抑制しています。 加えて、大手キャリアが行っている端末購入サポートを行っていない点も料金の低価格化に貢献していると言えます。この春には端末の“実質0円廃止”が携帯電話業界で話題になりましたが、大手キャリアで端末を購入する場合には、5万円から10万円程度という高額な端末代金の大部分を割引することによって、購入者の端末代金負担を軽減しています。しかし、MVNOの多くの場合は、1万円台から4万円前後という低価格の端末を一括または分割で購入するケースが多く、端末代金の割引はあまり行っていません。これは一見すると契約者に負担を強いているように見えますが、実際には販売促進費の通信料金への転嫁を少なくすることで、毎月の通信料金を安く抑えることができるのです。