阪神ドラ1佐藤に“広島の呪縛”と折れたバットの可能性
開幕第2戦では、巨人から開幕直前にヤクルトのトレードされた左腕・田口のスライダーを捉えてバックスクリーンの上部に当てる特大のプロ1号を放った。だが、ヤクルトバッテリーの配球にインサイドはなかったし、なにしろ田口のボールにキレがなかった。 佐藤攻略は、初戦の森下、栗林、この日の床田、栗林と一級品のボールと配球、そこに投げる制球力がセットになってこそ成立するのだ。 特に初戦で150キロを超えてくるストレートでインサイドをえぐられた森下のストレートの残像が佐藤の脳裏に残っている。 名将、野村克也氏は、配球の極意を「意識させること」と語っていた。そのためメディアを使って打席に立つ前から心理戦を仕掛けた。日本シリーズでイチローを攻略した際も「インコースいくぞ、インコースいくぞ」と、対戦前から言葉で、布石を打っていた。今、現在、佐藤は、その森下にかけられた“呪縛”から逃れられないでいる。 この日、佐藤は、1試合で3本バットを折った。プロでは極めて珍しい出来事である。インサイドのストレートに差し込まれるため、なんとか対応しようとグリップの位置を少し上にして始動を早めるという工夫をしている。だが、スイングが力むため、体からバットが離れて左肩が下がり、ヘッドが落ちるという悪循環に陥っている。 右手の小指をグリップにかけて、テコの応用でヘッドに力を伝えようとする打撃スタイルのため、タイミングを外して、ヘッドが下がった状態で芯を外すとバットが折れる確率が高まる。 だが、それは裏を返せばフルスイングとパワーの証でもある。バットが真っ二つに折れるのは、ほとんどの場合は、バットの先で打つたときに起き、バットの根っこで打って、こうも真っ二つに折れることは、プロでもそう多くない。 エンゼルスの“二刀流”大谷翔平もメジャー挑戦時に、最初は足を上げたり、ノーステップにしたり、タイミングを合わせることに苦労してバットを山ほど折った。その後の大谷のメジャーでの成功は語るまでもないが、佐藤の折れた3本のバットは、覚醒前の予兆としてとらえることもできる。
佐藤がプロの壁を乗り越えるために今、必要なものは、森下にかけられた“呪縛”を解くための頭の整理だろう。そして、どのボールに対しても、ぶれない軸のしっかりしたスイングを貫くこと。大きく崩され、片膝をついての空振りは、崩されている証拠。全球フルスイングではなく、狙い球を絞ることもひとつの手段だろう。空振りを奪されている高めのストレートを見送るようなことでもすれば、相手バッテリーを「どうしたんだ?」と、逆に考えさせることになるのかもしれない。 そしてもっと重要なことは、今後のベンチの我慢。目先の勝ち負けに左右されて佐藤を外すようなことだけはしてはならないだろう。