センバツ2024 応援一体=近江激闘 最後まで全力、延長戦で敗れる /滋賀
阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕した第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)の第1日の18日、2年ぶり7回目の出場となる近江は熊本国府(熊本)との初戦に臨んだ。試合は両チームとも一歩も譲らない投手戦となったが、延長の末にサヨナラで惜敗となった。敗れはしたものの、最後まで全力プレーを見せたナインにスタンドからは温かい拍手が送られた。【菊池真由、来住哲司、武市智菜実】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 開幕日での初戦。近江ブルーのような青空の下、試合は始まった。一塁側アルプススタンドには甲子園タオルを掲げ応援する保護者やOBら大勢の応援団が駆けつけた。団長の野球部員、奥原秀太さん(3年)は「一体感がある応援をしたい」と意気込み、副団長の鈴木誠也さん(同)も「球場を巻き込んでいきます」と張り切る。 エースの西山恒誠(同)は開会式終了後、多賀章仁監督から先発を告げられた。父健さん(52)が「悔いのないピッチングをしてほしい」と願う中、気持ちを引き締め、マウンドに立った。西山の球を受けてきた捕手の高橋直希(3年)の母君子さん(51)も「一生に一度立てるかどうか分からない舞台。頑張ってほしい」と声援を送る。 初回、先頭打者の森島海良(3年)が幸先良く安打を放つ。父茂晶さん(43)は「最近調子がよくなかったので、どんどん塁に出てチャンスを作ってほしい」と笑顔。嶋村隆吾(3年)も左前打を放ち、チャンスを作る。嶋村の父隆希さん(41)は「昨年はヒットを打てなかったので良かった」とほっとした表情を見せた。 そして三回、森島海の二塁打に続いて岡本一倖(3年)が右前に運び、待望の先制点を上げる。スタンドからは歓声が上がり、岡本の父正伸さん(52)は「今までの努力が報われほっとした」。しかし、直後に追いつかれると、試合は息詰まる投手戦に。西山は本調子ではないものの、決め球のスライダーで三振の山を築き上げ、味方の援護を待つ。 打線は八回に1死二、三塁の好機を迎えるが得点できず。九回に2死一、三塁のピンチを迎えるも主将の大石尚汰(3年)の好守で西山をもり立てる。しかし延長十回、1死満塁の場面、マウンドを守ってきた西山が投じた169球目は無情にも捕手の前でワンバウンドし、後ろへ。その間に走者が生還し、悔しいサヨナラ負けに終わった。選手らは悔し涙を浮かべながらも応援団へ感謝の気持ちを込め「ありがとうございました」とあいさつし、スタンドの応援団はナインの健闘をたたえた。 七回に安打を放った山本大悟(同)は「負けて悔しかったが、夏は絶対戻って日本一を目指す」とチームの再起を誓い、グラウンドを後にした。 ◇思いのせ 吹奏楽部員 ○…近江のアルプススタンドでは、同校の吹奏楽部員が演奏で応援を盛り上げた。滋賀ふるさと観光大使の西川貴教さんの代表曲「HOT LIMIT」や近江伝統の応援曲「Fire Ball」を含む約10曲を披露。攻撃時には、「スーパーマリオブラザーズ」のゴール時に流れる曲と、音楽ユニット「トンガリキッズ」の「B―DASH」を初披露。リズムの良い音色にスタンドは盛り上がりを見せ、近江ナインを勢いづけた。トロンボーンを吹く渡悠愛さん(3年)は「一塁側からレフトに届くまでの音を届けたい」と演奏に熱を込めていた。 ◇心躍る入場行進 ○…初戦を前にあった開会式では、晴天の中、近江の選手らも堂々と入場行進した。アナウンスで近江の名が読み上げられると、スタンドからは大きな拍手が湧き上がった。大石尚汰主将(3年)は「皆が楽しみながら歩いていた」と振り返り、先頭でプラカードを掲げたマネジャーの杉江愛美さん(同)は「歩くスピードや距離感など意識して行進した」と話した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇体力強化し「次こそ勝利」 西山恒誠投手(3年) 目標は「三振を取ること」。試合前に捕手の高橋直希(3年)と声を掛け、気合を入れてマウンドに上がった。昨秋の近畿大会で磨きをかけ、多賀章仁監督も絶賛するスライダーで相手を追い込み、14三振を奪った。味方の堅守もあって試合は延長戦にもつれこんだが、最後は暴投で決勝点を与え、「チームの皆が自分をこれだけ支えてくれたのに、勝ちにつなげられず悔しい」と顔をゆがませた。 センバツに向け、今冬は理想のフォームの研究や、体を柔らかくするためのストレッチなどの自主練習を重ね、着実に力を付けていった。それでも届かなかった甲子園の勝利。試合後、うなだれながらも「足がつっていて体力不足だった。もう一回甲子園に戻ってきて、次は勝ち進んでいけるように頑張りたい」と前を向いた。【菊池真由】