なぜ女子ジャンプ日本のエース高梨沙羅はメダルに届かず4位に終わったのか…荒れた風と不完全なテレマーク
加えて、このジャンプ台は、踏み切りの手前の「R」と呼ばれる角度が、ゆるやかな形状に設計されており、アプローチで助走路から得る足裏への圧力が少ない。どの選手も条件は同じだが、対応するには時間がかかるのだ。 この時点で暫定1位だったが、W杯から好調を維持するスロベニア勢がビッグジャンプを連発させ、高梨の順位を越えていく。クリジュナルが103m、クリネツが100m、そしてボガタイがヒルサイズを越える108mをマークして「ヤア!」と声をあげた。そして出場選手の中で総合ランキングトップのアルトハウスが105.5mを飛び、しかも飛型点で53.0点を獲得してトップに立つ。高梨は5位となった。 高梨は「思ったように飛距離は伸ばせなかったが内容的にはうまくまとめられた。2本目に自分のやるべきことに集中したい」と語り、2本目での逆転にかけた。 トップとは12.4ポイント差、メダル圏内まで5.2ポイント差だった。距離にして2.5m差である。 勝負の2本目。飛び出しのタイミングはあった。攻めたのだが、本来の高梨に比べるとまだどこか弱々しい。バランスをとるために空中で細かく両手を動かさねばならないほど。それでもK点を遥かに越え、結果的に2本目の最長不倒となる100mをマークした。 だが、着地にテレマーク姿勢を入れることができなかった。飛型点は50.0点。またしてもポイントは伸びなかった。それでも、高梨はテレビカメラに笑顔で手を振り、ランディングゾーンで待ち受けるチームメートが高梨の健闘を称えて輪を作った。 暫定1位。あとは上位4人の結果待ちである。 一人目、クリネツは90.50mと大失速した。他力頼みとなるが、あと一人、高梨を下回ればメダルが手に入る。だが、続くクリジュナルが99.5mを飛び、飛型点でも52.5点を獲得して暫定1位、3人目のボガタイは高梨に並ぶ100mでトップに躍り出た。最後に飛ぶ1本目1位のアルトハウスにはプレッシャーがかかったのだろう。飛び出す時点でのトゥビート(金メダルライン)は「95.5m」と示されていたが、K点に届かない。94.0m…彼女にすれば失敗のジャンプとなったが、テレマークはしっかりと入れて飛型点は2本目トップの53.5点と評価され、1本目の貯金もあり銀メダルを獲得。高梨はメダル圏外に押し出されてしまった。