なぜモーグルの堀島行真は予選の危機を乗り越え”涙の銅メダル”を獲得することができたのか…「あきらめたらダメ」
フリースタイルスキーの男子モーグル決勝が5日、河北省張家口の雲頂スノーパークで行われ、世界ランキング2位の堀島行真(24、トヨタ自動車)が銅メダルを獲得。今大会における日本勢第1号メダリストになった。 3日の予選1回目を通過できなかった堀島は、この日の予選2回目で5位に入って決勝へ進出。20人で争われる1回目を5位、12人に絞られた2回目を3位でそれぞれ勝ち上がり、6人が競う最後の3回目で81.48点をマークして3位に入った。 攻めの滑りを貫いたワールドカップ未勝利の伏兵、バルター・バルベリ(21、スウェーデン)が83.23点で金メダルを獲得。同通算71勝をあげている前回平昌五輪覇者、ミカエル・キングズベリー(29、カナダ)が82.18点で銀メダル。 日本勢では、競輪との二刀流で注目を集める平昌五輪銅メダリストの原大智(24、日本スキー場開発クラブ)が7位、ストック折れるアクシデントのあった杉本幸祐(27、デイリーはやしや)が9位でともに決勝2回目で敗退した。
スピード重視の戦略が成功
金メダル獲得へ一世一代の勝負をかけた。この日だけで4本目。3日の予選1回目を含めれば5本目の滑走となる決勝3回目。スタートから堀島はギアをトップに入れた。 ターン点、エア点とともに得点を構成するスピード点を重視した滑り。もっとも、リスクを冒す分だけミスと表裏一体となる。実際、第1エアの手前でバランスを崩した。 それでも第1エアは伸身姿勢で長く、なおかつ美しく宙を舞うフルツイスト(伸身後方1回宙返り1回ひねり)を決める。しかし、着地する場所が微妙にずれたからか、左右のコブに立て続けに乗り上げ、今度は大きくバランスを崩しかけた。 「2つ目ぐらいの旗門のところで、あきらめそうになったんですけど……これはちょっとあきらめたらダメだなと思って、まずはゴールまで行こうと」 こう振り返る堀島の脳裏には、4年前の平昌冬季五輪が浮かんでいたはずだ。金メダル候補の肩書きを引っさげて臨んだ決勝2回目。序盤でバランスを崩し、第1エアを何とか着地するも直後に転倒。11位に終わって無念の涙を流した。 ここであきらめたら、何のための4年間だったのか。かつての自分とは違う、という思いが執念と化して体勢を立て直させた。迎えた中間セクション。雪面に対してエッジを立て、スキー板をずらすのではなく走らせていく堀島の最大の武器、カービングターンが小気味いいリズムを刻んでいく。もちろんスピードも落ちていない。