なぜ北京パラ・クロカン立位で21歳の川除大輝が金メダルを獲得できたのか…41歳”レジェンド”新田佳浩との心のつながりとワックス戦略
北京冬季パラリンピックのノルディックスキー・クロスカントリーが7日、河北省張家口の国家バイアスロンセンターで行われ、男子20kmクラシカル立位で川除(かわよけ)大輝(21、日立ソリューションズJSC)が金メダルを獲得した。 4日の開会式で日本選手団の旗手を務めた川除はレース序盤から首位に立ち、チェックポイントのたびに後続との差を広げていく圧巻の滑りを披露。最終的には銀メダルの蔡佳雲(21、中国)に1分34秒9もの大差をつける52分52秒8でフィニッシュし、冬季パラリンピック史上で日本男子最年少の金メダリストになった。 1998年長野大会から7大会連続出場を果たし日本人最多タイとなる3つの金メダルを含めた5個のメダルを持つ新田佳浩(41、日立ソリューションズ)は7位。レジェンドから2度目のパラリンピックで初めてメダルを獲得した次世代のエースへバトンが受け継がれた。
想定外の先行逃げ切りレース
ほとんどの選手が精根尽き果て、フィニッシュラインを超えてコース上に倒れ込んだなかで、川除は笑みを浮かべながら右手で小さなガッツポーズを作っていた。 雪上のマラソンと呼ばれる過酷なレースを終えた直後で、川除の体力や気力も例外なく限界に達していた。それ以上に自分に対する驚きが、身長161cmの小柄な体を駆けめぐっていた。偽らざる思いは初々しい第一声に反映されていた。 「まさか自分が、という気持ちがすごく大きくて。まだ実感がわいていません。4年前と比べて、自分が成長したんだなとすごく感じています」 無理もない。日本選手団最年少の17歳で出場した前回平昌大会は、3つの個人種目で入賞すら果たせなかった。川除自身も「がむしゃらに滑るだけだった」と振り返る。 悔しさを刻み込んでから4年。持ち前のスピードに持久力を融合させ、体幹も鍛えてゼロからフォームを作り直した。スキー板にしっかりと重心を乗せながら前への推進力を生み出す滑りに変わり、それがレース序盤からのスタートダッシュにつながった。 「僕自身は後半徐々に調子が上がってくる。なので最初はまず落ち着いて入って、20kmのレースになると後半は他の選手たちが落ちてくると思っていたので、そこで自分が落とさずに、徐々に離していくレース展開を描いていました」 コーチとともに練り上げていた戦略は、いい意味で覆された。1周5kmのコースを4周するレースで2番目のチェックポイント、2.3km地点で早くもトップに立つと、2周目以降はチェックポイントのたびに後続とのタイム差を広げていった。