MERS、エボラ、デング熱も 「人獣共通感染症」ってどんな病気?どう防ぐ?
人獣共通感染症の予防は困難?
まず、渡り鳥をはじめ、野生動物の移動を完全に制御することは困難です。さらに、人から人だけの感染に比べ、感染経路はより複雑で多様といえます。人同士ではあまり想定しなくてもよい経路、つまり食物として摂取することや、かみ傷や引っ掻き傷からの感染も考えなくてはいけません。 新しい感染症が確認され、人獣共通感染症であると疑われても、多くの場合、感染源の動物が特定されるまでには時間がかかります。さらに感染源が特定できても、その動物の数や分布域、活動状況を把握するのは至難の業です。人獣共通感染症は、原因の特定からコントロールに至るまで、非常に複雑だということです。 加えて重要なのが、「ベクター」の存在です。昨夏話題となったデング熱では、ヒトスジシマカ(蚊)が感染に関わっています。このように病原体の運び屋となる蚊やダニ、ノミといった節足動物をベクターと呼び、この存在が感染を拡げることもあります。キャリアーやベクターの関係を図に示しました。
ちなみにデング熱ウイルスも、サルと人に感染することがわかっており、人獣共通感染症といえますが、日本では人と蚊の間でのみ、感染拡大が起こりました。
重要な感染症の多くが人獣共通感染症
日本では、感染力が強く症状が深刻になる可能性がある感染症について、「感染症法」(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)で対処方法を定めています。この法律で指定される感染症の多くは、人獣共通感染症にあたります。例えば最もリスクの高い「一類感染症」には、エボラ出血熱やペストなど7つの感染症が指定され、そのうち6つは人獣共通感染症です。続く二類感染症では、6つのうち4つが人獣共通感染症で、SARSや鳥インフルエンザ(H5N1型)が含まれています。 世界には約800種の人獣共通感染症があるといわれ、世界保健機関(WHO)では、その中でも約200種を重要と見なしています。そして人獣共通感染症の種類は、年々、増加傾向にあります。