MERS、エボラ、デング熱も 「人獣共通感染症」ってどんな病気?どう防ぐ?
今、向き合うべきこと
なぜ、人獣共通感染症は増加傾向にあるのでしょう? 現代の私たちは国際交流のさかんな時代に生きています。感染症もさまざまな経路を通じて、国境を越えた感染拡大のリスクを持つようになりました。医療技術の進歩により、感染症は減っていくと期待される一方、活発化する人間活動が感染症の拡大を招いているというのも事実です。 多くの場合、病原体とその宿主や運び屋となる動物は、本来限られた地域に生息しています。ところが、人間活動を通して、これらが世界各地に拡散する機会を増やしています。例えば、野生動物を娯楽などのために売買して、本来の生息地から人間社会へもち出すということが行われています。一方で熱帯林の開発など、人間が未開の地に踏み入る機会も増えています。人と動物が、もとのまま棲み分けをしていたなら、病原体が人の間で流行することはなかったかも知れません。人間活動の影響が、私たち自身に返ってきているとも考えられるのです。
感染症の流行、どうやって防ぐ?
MERS、鳥インフルエンザといった新しい感染症に対し、日本ではどのような対策を講じているのでしょうか? よく聞くのは「水際での防疫」という言葉ではないでしょうか。これは「水際(海)から先の国土には、病原体をもち込ませない」という予防対策です。実際には潜伏期間があったりするので 、感染源の持ち込みを完全に防ぐことは困難です。しかし、海に囲まれた日本では、水際対策が一定の効果を示す例もあります。また、一度侵入した感染源を封じ込めて除去し、それ以上の侵入を防ぐことで、撲滅を目指すこともできます。地理的に孤立した島国として、感染症対策の強みがあるわけです。 かつて日本での撲滅に成功した感染症の1つが、狂犬病です。狂犬病も人獣共通感染症にあたります。世界では毎年3万5000人から5万人が犠牲になっていますが、日本は1957年以降発生がなく、撲滅に成功した「清浄国」となりました。