MERS、エボラ、デング熱も 「人獣共通感染症」ってどんな病気?どう防ぐ?
韓国に打撃を与えた中東呼吸器症候群、通称「MERS(マーズ)」。終息の兆しが見えてきましたが、今回の流行が収まっても、感染症の脅威がなくなるわけではありません。 MERSウイルスの感染源は、ヒトコブラクダの可能性があると報じられました。近年、人にとって新たな感染症が話題になると、必ずといって良いほど動物との関連が指摘されます。例えば、SARS(重症急性呼吸器症候群:サーズ)ではハクビシンというジャコウネコ科のイタチに似た動物、鳥インフルエンザではアヒルやカモなどの水鳥類やニワトリ、エボラ出血熱ではサルといった動物が関わっているとされました。
そこで今回は獣医学の視点から、MERSをはじめとした動物の関わる感染症について紹介していきます。
人獣共通感染症とは?
ウイルスや細菌などの病原体には、それぞれ宿主となる生物が存在します。宿主生物は1種の場合もあれば、複数の場合もあります。その中で、脊椎動物(哺乳類や鳥など背骨をもつ動物)と人との間で自然に伝播するすべての疾病を、「人獣共通感染症」といいます。 少し細かいですが、宿主となる生物の体内に病原体が侵入し、定着、増殖するまでの過程を「感染」、感染を受けた生物の体に病的な変化が現れる段階を「発症(発病)」といいます。宿主の中には、感染しても発病しないまま、病原体を体内にもち続ける動物がいます。また、感染してから発病までのタイムラグ(潜伏期間)の間や、回復したあとでも体内に病原体が残り、まわりへの感染源になることもあります。 このように、元気であるにもかかわらず、体内には病原体をもち、咳や便、体液などを通して病原体を排出する動物を「キャリアー」とよびます。例えばエボラ出血熱では、コウモリがキャリアーとなり、サルや人に感染を拡げているとされます。 人獣共通感染症の場合、キャリアーも含めた宿主に多様な動物が含まれるという点から、コントロールをより困難にしています。どういうことか、考えていきましょう。