『サラダ記念日』の俵万智が教える、思いが伝わる短歌のコツ。「出来事」と「思い」が基本構造《俵万智さんの短歌入門レッスン・実践編》
《数字&固有名詞を有効活用》 「この味がいいね」と君が言ったから 七月六日はサラダ記念日 生きるとは手をのばすこと 幼子の指がプーさんの鼻をつかめり 数字や固有名詞を入れると情報量が一気に増えます。七月六日という日付だけで、初夏で七夕の前日であることが伝えられる。 ぬいぐるみではなくプーさんだからこそ情景が浮かびます。読者とイメージを共有する有効な方法です。 《季節&色彩を取り入れて》 「おかあさんきょうはぼーるがつめたいね」 小さいおまえの手が触る秋 色鉛筆の緑ばかりが減っている 我に足りない色かもしれず 日本は四季に恵まれており、昔から季節の描写が歌に取り入れられてきました。何を歌っていいかわからない人でも、チャレンジしやすいテーマです。 また、短歌は言葉で描く絵だと言われることもあり、色彩を用いると印象的な一首になります。 《擬音&擬態語でドラマチックに》 子のドラムドンドンタッツードンタッツ 「シャーン」のところで得意そうなり 白菜が赤帯しめて店先に うっふんうっふん肩を並べる 擬音や擬態語は日本語の大きな特徴のひとつ。ただ、「雨がザーザー」「犬がワンワン」など当たり前の表現では、文字数の浪費に。 時には自分で擬音を発明してもいいですし、すでにあるものなら新鮮に感じる使い方を考えてみてください。 (構成=篠藤ゆり、撮影=大河内禎)
俵万智
【関連記事】
- 《俵万智さんの短歌入門レッスン・基礎編》用意するのは紙とペンだけ。「出来事」と「思い」を日本語のリズムに乗せて
- 俵万智「老いや病、押し寄せる『苦』を乗り越えた50代。がんになった作家の心の道のりをたどると、温かい力が涌いて来る」
- 歌人の俵万智さんとシンガー・ソングライターの吉澤嘉代子さんが語る、短歌の魅力。「働くこと」をテーマに、2人を唸らせた嘱託職員の作品とは
- 歌人・作家 小佐野彈「あなたは恵まれている」の台詞に隠れた社会的圧力。セクシュアリティの悩みも重なり学校にも家にも居場所がなかった
- 誰と過ごしている時に幸せを感じる?子ども、パートナー、ペット…まさかの1位は?推しのライブ、猫との睡眠、家族との食事、あなたの至福の時間とは