井上咲楽「不細工のくせに」親しい後輩が書いたらしいSNSを目にして戦慄…<眉毛の子>でブレイクも、見た目以上のものを残せず苦悩した日々
◆眉毛が運んでくれるチャンス、深まる悩み 自分ではまさか、眉毛がウケると思っていなかった。 ホリプロスカウトキャラバンで注目を浴びたし、中学生の時から散々イジられていたけど、「東京にはこんな眉毛の人はいっぱいいる」と思い込んでいたのだ。 だから、「眉毛の子」と珍しがられて、テレビ番組に出るチャンスが続いた時も「え!? 私の眉毛って、そんなに?」と半信半疑。これが武器になるなんて想像もしていなかったし、予想外だった。 高3の頃、『アウト×デラックス』(フジテレビ)や『アッコにおまかせ!』(TBSテレビ)『バラいろダンディ』(TOKYO MX)など、バラエティ番組に続けて呼ばれたことがあった。まさに、眉毛きっかけでのテレビ出演だったけど、トーク力がまったく追いつかない状態だった。 だから1回は呼ばれるけど、2回目の声はかからない。期待して呼んでくれたスタッフさんと収録後に顔を合わせるのが申し訳なくて、裏口からこっそり帰ったこともある。テレビの現場の大人の人たちは面と向かって「良くなかった」とは言わない。ただ呼ばれなくなるだけだ。その正直な残酷さが結構きつかった。 テレビに出られるのはうれしい。だけど、毎回うまくいかないから苦しい。 失敗体験が積み重なるし、マネージャーさんからは死ぬほど怒られるし、楽しくない。 私の感覚では、高校時代はもちろん、21歳くらいまではチャンスをもらっても、波に乗れないまま足踏みしている感覚だった。 眉毛のインパクトで、井上咲楽を認知してもらうスピードは速かったけど、実力が足りない。見た目のインパクト以上の何かを残せない。自分の実力不足に焦りを感じて、答えの出ない武器探しが始まっていった。
◆顔にマッキーで落書きして宇都宮線で東京へ マネージャーさんと一緒に「これはチャンスだ」と気合いを入れて挑んだ番組があった。 でもいざ収録が始まると司会の方と芸人さんたちのテンポのいいやりとりに飲まれてしまって、全然しゃべれなくなった。このままじゃダメだ……と思った私は、トークの流れを読まずに発言。ベテラン芸人さんの機転に助けられたものの、スタジオがヘンな空気になってしまった。 収録後、マネージャーさんからとても書き残せない言葉と勢いで、ガンガンに詰められた。 スカウトキャラバンの時から近くで支えてくれている人が、本気で叱ってくれている。なんとかしたい。なんとかしなくちゃ。 幸か不幸か、翌日もバラエティ番組に出演するスケジュールだった。 朝、学校に行って早退。栃木から東京に向かう午前中の宇都宮線で、マッキーで眉毛をつなぎ、閉じたまぶたに目を書き込む。 何か面白いことをして、まずはマネージャーさんに誠意を見せたいともがいていた。 罰ゲーム直後のような不審な状態で、うつむき加減で電車に揺られていると、乗り合わせた人たちは「なんなんだこの人」という顔でチラチラとこちらを見てくる。 私は寝たふりをして、無の気持ちでいた。 でも、まぶたを閉じるとマッキーで書いた目が露見して、余計に怪しかっただろうな。 テレビ局でマネージャーさんと合流し、「昨日はすいません!」と頭を下げたら「咲楽ちゃん何それ?」「もしかして、そのまま電車に乗ってきたの!?」と笑ってくれた。 反省しているから顔にマッキーで落書きするなんて意味不明だが、私は精一杯だった。 ※本稿は、『じんせい手帖』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
井上咲楽