景気後退懸念 米国株、利上げ観測の行方次第でもう一波乱も?
住宅市場の急減速が米経済を下押し?
これに追い打ちをかけるように住宅建設業者の景況感を示すNAHB住宅市場指数も8月に垂直的な落ち込みを示しました。ヘッドラインは49へと急落し、パンデミック初期局面を除くと約8年ぶりの低水準を記録しました。2022年に入った後に急上昇した住宅ローン金利、建設労働者・資材の高騰によって消費者の住宅取得環境は著しく悪化しており、そうした下で住宅建設業者の景況感は冷え込んでいます。住宅市場の急減速が複数の経路を通じて米経済全体を下押しする展開に注意が必要です。
利下げ観測否定に躍起 再度の大幅利上げも
景気の下振れリスクという意味においては、アナリストの業績予想が下向きに転じていることが特に重要です。S&P500に採用されている企業の予想EPS(一株当たり利益、12か月先の予想)は、これまで高水準の自社株買いに加え、インフレによる嵩上げ効果も一部にあり増加基調を維持してきましたが、実質GDP(国内総生産)が2四半期連続でマイナス成長(テクニカル・リセッション)を記録するなどマクロ環境の明確な変化を受けて、直近では業績見通しが慎重化しています。 そうした中、FRB高官は最近の米金利低下・米国株上昇を牽制する意図もあってか、金融引き締めに積極的な姿勢を強めており、例えばカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁は2023年末の製作所金利が4.4%になるとして、市場参加者が意識する2023年前半の利下げシナリオを明確に否定しました。米国株はNYダウが200日移動平均値を回復したほか、S&P500が半値戻し(最高値から最安値までの下落を半分埋めること)を達成するなどテクニカル面で不安は後退していますが、再度の大幅利上げ(0.75%)が十分に想定される9月FOMC(米連邦公開市場委員会)に向けてもう一波乱あっても不思議ではありません。
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