もし今、アメリカで内戦が勃発したら!? 超話題作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の監督を高橋ヨシキが直撃!「映画は未来への警告である」
アレックス うん、彼は何が起きているかわかっているよね。映画作家としてとても面白く感じるのは、同じ場面について、いろんな人が異なる解釈を考えてくれるときだ。人々がそうやってさまざまな解釈をする中においては、ぼくの(監督としての)決断はほとんど無関係だ。 しかし、ぼくの「バージョン」では、サミーは黒人であるがゆえにジェシーたちの集団がレイシストだと理解している。彼らに近づくことは「死」そのものだと気づいているんだ。だから警告する。ところが、サミー以外のキャラクターはその徴候に気づけず、のこのこ近づいていってしまう。アメリカ人にとって最も身近なはずの「人種差別」が不可視化されてしまっていたからだ。 ぼくがこの場面を作った理由はドナルド・トランプ前大統領だ。新型コロナウイルスのパンデミックが起きたとき、トランプは中国を標的として人々の中にある人種差別のスイッチを押し、選挙運動に利用した。トランプはわざと「チャイナ!」と吐き捨てるような発音をするので、ジェシーにも同じように発音してくれるように頼んだよ。 ■映画は未来への警告であり、懸念 ヨシキ 意図されたものかどうかわかりませんが、サミーは「この先には死が待ち受けている」と言います。 あなたの映画には、そういった終末・破滅の予感がよく描かれています。脚本で参加した『28日後...』や『サンシャイン2057』、原作を務めた『ザ・ビーチ』や監督・脚本作の『エクス・マキナ』もそうです。個人的なものか世界的なものかを問わず、何か悪いこと、黙示録的な終末がやって来るという感覚がある。 アレックス そうかもしれないなあ(笑)。実存主義哲学では「人間存在の基本的な状態は不安である」というけど、それはおそらく正しい。 ぼくの場合はそれが「何か悪いことがやって来る感覚」になるんだと思う。ぼくの映画の多くは近未来の世界を描いたもので、来たるべき政治状況やテクノロジーを反映しているが、そこには危険もある。映画はそれに対する警告であり懸念でもあるんだ。 ヨシキ 未来といえば、今回のアメリカ大統領選はどう考えていますか?