電通過労自殺9年 高橋まつりさんの母「国は対策見直しを」「娘と共に力尽くす」手記全文
広告大手電通の新入社員、高橋まつりさん=当時(24)=が長時間労働やパワハラに苦しみ、自殺してから25日で9年となるのに際し、母の幸美(ゆきみ)さん(60)が手記を公表した。全文は次の通り。 【写真】富士山に登ったときの高橋まつりさん(右)と母の幸美さん まつりがいない9回目のクリスマス。12月はいつも心がざわざわします。言葉で表すのは難しいですが、まつりを助けられなかったあの日が近づくからです。たとえ「電通過労死事件」が人の記憶から消えても、どんなに時が過ぎても、まつりは大切な愛しい娘。一生忘れることはありません。 2015年、まつりは希望を持って電通に入社しました。新入社員研修でアイデアが採用されてラジオで放送されたことや、研修の最後のプレゼンで優勝したことを嬉しそうに電話してきたことが昨日のことのようです。 今年は「入社10年目」。同期入社のみんなは「入社10周年同期会」をしたそうです。在職中の人も退職した人も一緒でした。 もしまつりが生きていたら、参加していたかもしれません。 10年目の社員として、後輩社員のロールモデルになれるように頑張っていたかもしれません。やりがいをもって生き生きと働いて、休日には大好きな人たちと過ごして、充実した人生を生き、将来に夢を描いていたかもしれません。 「あんなに頑張って生きていたんだから、絶対に幸せになってほしかった」そう思うと悔しくてたまりません。 まつりが亡くなった後、電通が過労死の再発防止を約束して8年になります。これまで様々な取り組みを行って、2年で残業時間を6割削減したそうです。娘がやっていたデジタル広告の「とてつもなく時間がかかる作業」はAIがやるようになったそうです。制度を整えて、グループ各社で女性活躍推進企業「えるぼし認定」などを取得したそうです。 娘がいた頃も制度はありましたが、長時間労働や残業隠し、ハラスメントに苦しんでいる社員が沢山いました。娘の他にも社員の過労死がありました。電通があの頃の社風を変えようという姿勢はわかります。全体的には残業時間を減らすことはできているのかもしれません。 今最も大切なのは、プロジェクトのために睡眠時間を削って残業をしたり、休日出勤をしている社員に対して、会社は何をするべきなのか考えることではないでしょうか。残業時間が長い社員は知らないうちに病気になる危険が高いということを絶対に忘れないで欲しい。