エシカル市場規模は8兆円超、さらに拡大するには
記事のポイント①エシカル消費という考え方の浸透とともに、その市場規模も拡大を続ける②日本のエシカル市場規模は8兆円超(2022年)に上るという試算も出た③消費者の「声」を可視化することで、さらなる拡大が期待できる
エシカル消費という考え方の浸透とともに、その市場規模も拡大中だ。日本のエシカル市場規模は8兆円超(2022年)に上るという試算も出ている。エシカル消費拡大の背景と、今後の更なる広がりについて考察する。(サステナビリティ・プランナー=伊藤 恵) ■エシカル消費の市場規模は「8兆円超」に エシカル消費とは、社会や環境に配慮した製品やサービスを選ぶことを指す。日本でも、2014年に日本エシカル推進協議会(JEI)が設立され、消費者庁も2015年に「倫理的消費」調査研究会を開催した。 こうした取り組みやSDGsの浸透もあり、エシカル消費への意識は年々高まりをみせている。 東京経済大学の渡辺龍也・名誉教授と法政大学大学院の柿野成美・准教授らエシカル消費に詳しい研究者からなるエシカル市場規模調査実行委員会の調査によれば、日本のエシカル市場の規模は8兆円を超える。そのなかでフェアトレード市場は400億円に達し、これは2015年の265億円から約1.5倍の増加だ。消費に対する意識の変化が起きているといえる。 ■Z世代、SNSで共感できるブランド探す エシカル消費が拡大する要因として挙げられるのが、若い世代の意識変化だ。Z世代は、SNS上での比較検討をスマートフォンの中で日常的に行う。 その際重視するのは価格や機能ではなく、企業の姿勢だ。例えばアパレルブランドでも、単に販売している服のデザインが良いかだけでなく、起用しているモデルや包装材などまでみている。 提供する商品やサービスだけでなく、環境問題やジェンダーギャップ、多様性に対する企業の価値観や、どのような社会的責任を果たしているのかを意識し、購買の判断基準にしているのだ。 Z世代はSNS上で友人関係を築くように、自分と同じ世界観を持つブランドを検索して見極めている。そして自分自身もSNS上で周りからどう見られるかを意識しており、企業の選択には雰囲気や人柄が重視され、企業の姿勢に共感できるかどうかが大きく影響している。 ■消費者の声を「買い物カゴ投票」で見える化へ エシカル消費の課題として、多くの消費者が自分の行動では何も変わらないと考えていることが挙げられる。世界的な消費者インサイト調査(※)によると、持続可能なライフスタイルの障壁には、「高価である」(50%)、「何をしたらよいかわからない」(38%)、「私の行動では何も変わらない」(28%)といった心理的バリアが多いことが明らかになった。 ※Healthy & Sustainable Living Report 2023 「買い物は投票だ」と表現されることもあるが、エシカルな商品を多くの消費者が選択し購買していくことは、その企業の発展、ひいてはエシカルな商品がより世の中に浸透することにつながっていく。 このような消費者の声をより可視化させることにチャレンジしたのがWWFの「買い物カゴ投票」という取り組みだ。 スーパーで買い物かごを返却するいつもの行動を、カゴ置き場に「YES」「NO」2つの場所をつくることで、スーパーからの問いに対する意思表示を行うことができる場にした。 この新たなコミュニケーション形式が広がれば、消費者の声をスムーズに店舗に届け、持続可能な取り組みへとつなげることが可能になり、変化を生むことも期待されるだろう。 エシカル消費の拡大は、一過性のトレンドではなく、社会の価値観として根付いていくことが期待される。Z世代を中心に消費者の意識改革が進む中、企業にとっても、持続可能で意義ある商品やサービスの提供がますます重要になっていくだろう。