がん医療で広がりつつある医師と患者の共同意思決定「SDM」とは?【更年期女性の医療知識アップデート講座】
インフォームド・コンセントとどう違う?
インフォームド・コンセントとは、どう違うの? と思う人もいると思う。 昔は、日本では主治医が治療の決定をすることが当たり前だった。がん告知さえ、本人にしないで治療を進めることもあった。そんな中で、1990年頃から、医師だけが治療を決めるものではないという考え方が提唱されてきた。その際に広まった考え方がインフォームド・コンセントだ。1997年に医療法が改正され「説明と同意」を行う義務が初めて法律となった*1。 それ以前、今から30年くらい前までは、医師が経験上、よいと思う治療法を行う医師主導型の医療だった。でも、研究や臨床試験が進み、最善とされる治療法が確立して、学会がエビデンスに基づいて「診療ガイドライン」をまとめ、それを治療現場の医師たちが活用して治療を進めるようになった。 ここで登場するのがインフォームド・コンセント=説明と同意だ。医師が治療内容やリスクについて十分に説明し、患者がその情報に基づいて治療に同意するというプロセスを重視している。これによって、患者の自己決定権が強調されるようになった。 しかし、さらに今、がん医療の進歩で治療の選択肢が加速度的に増え続け、難しい決定を迫られる状況が増えてきている。私たち患者一人一人の考え方や生き方、価値観、大切にしていること、楽しみなどによって、どの治療を選ぶかが異なるからだ。そこで、広まってきたのがSDMという患者と医療者の共同意思決定なのだ。 *1 「日本医師会会員の倫理向上に関する検討委員会(答申)医の倫理綱領・医の倫理綱領注釈」平成12年2月2日
どう生きたいのか? 何を優先したいのか?
例えば、A療法は「効果が最も高いが、つらい副作用がある」、B療法は「効果は劣るが、副作用は少ない」という治療法の選択肢があることが医療者から提案されたとする。 皆さんなら、どうするだろうか? A療法とB療法、どちらを選ぶだろうか? 考えるときに、その人が40代なのか、80代なのか、年齢によっても変わってくるかもしれない。 また、その人の生き甲斐である趣味が副作用で続けられなくなるかもしれない。子育て中で少しでも長く生きることを優先したいかもしれない。子どもたちも巣立っていて、仕事も終えているので、つらい治療はせず穏やかに残された日々を過ごしたいかもしれない。仕事が生き甲斐で、少しでも長く仕事ができる人生を送りたいかもしれない。 これは極端な話かもしれないが、選択肢が増えて病気をたたくすべが増えることは、私たち患者にはうれしい半面、悩む状況が増えるのだ。進行したがんだけの話ではない。早期がんで発見されても、治療の選択肢が増えることで、患者が主体的に治療を選択することが求められるようになっている。 もしも、がんを告知されたとき、あなたならどうするだろうか? 厳しい状況の中で、自分はどう生きたいのか? 人生の中で大切にしていることは、何なのか? を考えなければならない。