リバースモーゲージに積極的・消極的な銀行はどこ? 東京の地方銀行が力を入れている理由とは
リバースモーゲージに消極的な銀行がある理由
一方、リバースモーゲージに消極的な銀行もあります。その理由は以下の2点が挙げられます。 (1)手間がかかるし管理が大変だから 銀行員の立場から言うと、リバースモーゲージは手間がかかるし管理も大変です。 たとえば担保についてだけでも「担保調査」「担保評価」「担保の登記」など、銀行側は人件費などの経費が必要になります。 また、勝手に売却されていないか? 転居して(逃げて)いないか? 利用者が生存しているか安否確認をしたりと、担保不動産の定期的な巡回や管理が必要です(金融機関により巡回の有無や頻度は異なります)。 もちろん、こうした手間や経費を勘案して融資利率は住宅ローンなどに比べれば高めになっているのですが、経営の合理化が必要な金融機関などはリバースモーゲージに消極的になる場合もあるのです。 (2)トラブルと風評が心配だから リバースモーゲージは高齢者が契約するケースが主流なので、「銀行が高齢者をだました」「お年寄りから自宅を取り上げた」など、実際は死亡後に競売するなど契約にのっとり正当な手続きを踏んだとしても、遺族や近所から悪く取られる可能性が高くなります。 「あそこは借金が返せず、銀行に自宅を取り上げられた」などといった風評被害は、相手が高齢者だとより金融機関側への風当たりも強くなるものです。利益よりも、こうしたトラブルや風評のマイナス要素を考えて消極的になる銀行もあります。
銀行員の視点で見た、銀行ごとのリバースモーゲージに対する姿勢
では実際に、リバースモーゲージに積極的な銀行と、そうでない銀行はどこなのか、銀行員としての個人的見解ではありますが、ここまで説明してきた内容を踏まえて考えました。 メガバンクは全体的に手を引いているようです。オリジナルローンがないメガバンクは言うまでもないのですが、オリジナルローンを扱っている「三井住友銀行」と「りそな銀行」でも、公式サイトからリバースモーゲージの詳しい内容のページにたどり着くのに手間がかかるため、「イチオシではない」と感じました。 ネット銀行も消極的ですが、これは最初から目線が向いていないのでしょう。そもそもネット専業という点で、ターゲットは若年層・現役世代なので、当然のように、オリジナルのリバースモーゲージを扱うのは「楽天銀行」だけ。「SBI新生銀行」と「イオン銀行」で「リ・バース60」があるのみで、ほかは取り扱いがありません。 東京の地方銀行は特に積極的 一方、地方銀行はリバースモーゲージに力を入れていることがわかります。たとえば、地方銀行でも後発となる「東京スター銀行」や「きらぼし銀行」など、東京の地方銀行はかなり積極的です。 これにも理由があり、担保になる不動産は高価値であるほど大きな評価額で大きく融資できて、つまり利息収入も見込めるというわけで、そこは東京という立地から積極的になっていると考えられます。 ちなみに、消極姿勢の銀行ではネガティブなコラムを掲載するなど「手を引いている」姿勢が如実に表れていると感じました。たとえば、みずほ銀行(「リ・バース60」で、オリジナルのリバースモーゲージなし)では、コラムで以下のように書かれています。 リバースモーゲージは、一見すると便利なサービスですが、メリットがある反面、思わぬデメリットやリスクも多いことから「リバースモーゲージの罠」や「リバースモーゲージやばい」と言われています。 リバースモーゲージで後悔しないためには、トラブルにならないための対策を考え、他の商品を利用することも含めて比較検討していきましょう。リバースモーゲージ以外の選択肢として、リ・バース60があります。 出典:みずほ銀行「リバースモーゲージが「罠」「やばい」と言われる理由と検討ポイント」 銀行員としてはいろいろと申し上げたいことはあるのですが、「リバースモーゲージはやばい」と言いながら「でも、リ・バース60がありますよ」とは、かなり無理があると感じてしまいます。
まとめ
今回はリバースモーゲージに積極的な銀行と一歩引いて消極姿勢な銀行があることを説明してきました。これからも高齢化社会とともに、リバースモーゲージが今後も伸びていくのではないか、と銀行員の私は考えています。 そのためには、安心できるように商品性の見直しなどを含め、利用者にわかりやすくやさしい融資商品であり続けてくれるよう、願っています。
加藤隆二