セカンドオピニオンって大事! 26歳で乳がんが判明したきっかけ『アラサー会社員の乳がんの備忘録』著者インタビュー
「ちょっと待って!しこりがある!」 会社員として働きながらイラストレーターとして活動する小野マトペさんは、20代半ばのとき、乳房のしこりに気づきました。最初に検査を行った病院では「心配ない」と診断されたものの、念のためセカンドオピニオンへ。さらに検査を進めてみると、乳がんと診断されたのです。小野さんはその経験を漫画としてつづり、『アラサー会社員の乳がんの備忘録』を電子書籍化しました。 【漫画を読む】『アラサー会社員の乳がんの備忘録』を最初から読む そんな小野さんに、がんの疑いを抱き始めたとき、そして結婚や出産、キャリアアップを考える30代を前にがんと診断された、当時の心境などを伺いました。 ■気になったらすぐに! セカンドオピニオンの重要性 入浴前、自分の乳房にしこりがあることを発見した小野さん。 心配になった小野さんはネットで検索してみますが、気分はモヤモヤ。仕事をしている間も何だか気になる…。そこで彼女は近所の産婦人科に駆け込みました。 しかし、そこでは「乳腺」を診ることはできないと言われてしまい、別の病院へ出向くことに。 翌日、紹介してもらった病院に行き、触診とエコー検査の結果、胸の内部にある組織が出てきただけで、問題ないとの診断でした。 しかし、それでも心配だった小野さんは、セカンドオピニオンを受けることに。今度は都心にある女性のみが入れる検診クリニックで、マンモグラフィーやエコー検査などを受けました。 はじめてのマンモグラフィーに苦戦しつつも検査を終えた小野さん。 その病院での診断結果は「しこりはあるものの、確実に悪性とまでは言えないので、経過観察」というもの。 もし気になる場合は、注射針のような器具で組織の一部を採取して調べる針生検という方法も教えてもらい、その病院を後にしました。 セカンドオピニオンを聞いてから半年、しこりの大きさに変化はなかったものの、不安な気持ちがふくらんでいた小野さんは、針生検を受ける覚悟を決めました。 検査自体は麻酔のおかげで鈍痛を感じる程度の痛みで終了。そして検査結果を聞く日、緊張のなか聞いた診断結果は、がんでした。 悲しみと不安があふれて泣いてしまった小野さんでしたが、医師によればがんは「非浸潤がん」と呼ばれるもので、手術で取ってしまえば完治可能だそう。 手術ができる転院先として小野さんが選んだのは、専門的なK病院。初診では、主治医との顔合わせと今後の説明を受けました。 今後は、手術前に受けるべき検査を数日間かけて行い、その後に3泊4日の入院になるようです。こうして小野さんはこの日、病院からもらったたくさんの資料とともに帰宅しました。 ■「絶対何かあるでしょ!」と疑っていました ――小野さんは26歳のときに乳房にあずきサイズのしこりがあることに気づいたそうですね。もともと、乳がんのセルフチェックの知識をお持ちだったのでしょうか? 小野さん:安野モヨコさんの漫画の一コマで、乳がんのセルフチェックを主人公のお友達がやっていたんです。それから私もセルフチェックについて調べて、自分なりにセルフチェックをするようになりました。 ――最初に行った産婦人科では「乳腺」を診ることができず、乳腺外科のある病院のリストを渡されました。日々のお仕事などで忙しい中、その時点で乳腺外科の受診をあきらめなかったのは何か理由があったのでしょうか? 小野さん:私の性格が「気になったら、いてもたってもいられない性格」でして……。絶対何かあるでしょ! という謎の意気込みのもと病院を探しました。 ――次に行った病院の乳腺外科で受けた最初の診断は「問題なし」だったそうですね。そしてセカンドオピニオンで受診した病院でも「経過観察」との診断結果だったということで、乳がんを発見する難しさを感じました。針生検を受けようと思った一番の理由は何だったのでしょうか? 小野さん:白黒はっきりさせたい! という気持ちが一番強かったです。「経過観察でも大丈夫」と言われましたが、経過観察ってとっても「グレー」ですよね。そのうえ、がんはとても怖い病気です。「もしかしたらがんかも……」とずっとうじうじ悩んでいるくらいだったら針生検してみよう! と決めました。 ――がんだと告知された直後は悲しみと不安で泣いてしまったとのことでしたが、それ以降、別の病院に移って入院・手術する中で、どんな心境の変化がありましたか? 小野さん:がんと告知された時は、パニックに近かったですね。「私の人生もう終わり?」的な。その後は「がんになってしまったのだから仕方ない、今の自分と向き合おう」という心境になりました。 しかし、国立がんセンターに転院して、周りの患者さんたちが、家族と一緒に病気と向き合っている風景を見て、自分はひとりぼっちで病気と戦わないといけないと感じ、病院の裏口で号泣したこともありました。当時同棲していた彼氏が病院に付き添ってくれなかったこともあり、本当に本当に心細かったです。でも今思い返すと彼氏含め、周りの家族などに心配をかけたくないという思いから、気丈に振る舞っていたような気がします。 ――入院していたとき、検査前に泣いたり、手術前に「怖い」と大声で叫んだりしてしまうこともあったそうですね。恐怖心や不安を表に出したことで、心境に変化はありましたか? 小野さん:今になって振り返るととても恥ずかしいですね(笑)。「怖い!」と叫んだことで、看護師さんに「この患者は怖がっている」と認識してもらえたのは良かったかもしれません。その後は丁寧なお声がけや対応をしてくださり、なんとか手術台に上がることができました。 ――入院後にバタバタしている病棟事務さんを見て「大変そうだな」と思ったり、手術直後に医師と看護師の会話を聞いて「異業種の会話って新鮮」と感じていたりする様子が印象的でした。不安な状況だったと思いますが、どんな心境だったのでしょうか? 小野さん:当時、すでに自分の経験や記憶を漫画に残したいという思いがありました。それで、身のまわりで起こった出来事を俯瞰して見ながら、なるべく記憶しておこうと思っていました。 *** 現在はSNSを中心にがんやがん検診についての啓蒙活動を行う小野さん。本作の電子書籍化が決まったときの心情は「若い世代の人たちに読んでほしい!という気持ちでいっぱい」だったと教えてくれました。 がんは他人事ではなく誰でもなりうる病気です。早期発見のためにも、正しい知識を持ち検診を定期的に受けたいですね。 取材・文=山上由利子