【行正り香さんにきく〝50代。これからの住まい〟に思うこと〟⑤】50代になったら物を捨てるだけではなく、むしろ何を残していくかを考えることが大事
「思えば、私たちは子育てにしろ、仕事にしろ、生き方にしろ、前ばかりを見てきたような気がしませんか? でも50歳を過ぎたらそろそろ後ろ(過去)を振り返りながら、そして過去を味わいながら生きていってもいいのではと思います。だから美しい思い出がある物は手元に残していく、ということも必要なのでは。 私には忘れられない家があります。その家に出会ったのは、学生時代です。 アメリカのサンフランシスコ郊外のバークレーという街に留学しているとき、ノブ・ヒル(※)というエリアに住んでいる方のお宅に遊びに行かせていただく機会が何度もありました。 ※高級ホテルや歴史的な邸宅があるエリア。アメリカ国内でも屈指の高級住宅地 皆さん、川に面するアパートメントでものすごくおしゃれに暮らしていました。すばらしい眺望を眺めながらワインを飲んだり、ジャズを聴いたり…生活を楽しむとはどういうことなのか、彼らの生活を通して知ったのです。 まだ学生でしたが『こういう家に暮らしたい、そしてこういうふうな生活を送れたらいいな』という、理想の暮らし方に出会ったのです。 それから年月はたちましたが、その思いは変わることはなく、今暮らしている家に出会えたのも長年持ち続けてきたこの理想のおかげです。
また、私はもともと食器ブランドのロイヤル コペンハーゲンが好きで、そこから北欧家具、北欧の照明器具、北欧の建築と関心が北欧のさまざまなものへ広がっていきました。 それらが蓄積され、今の住まいのベースとなっています。
皆さんも、思い出が詰まった物や『こんな所(家)に住めたらいいな』と憧れた場所がひとつはあると思います。そんな物や場所を思い出し、今の生活にひもづけ、取り入れてみてはいかがでしょうか。 そうしているうちに自分らしい空間とはどんなものなのかが見えてきて、残すべき物が何なのかがわかってくるかもしれません」
◆空間の雰囲気を壊すテレビやエアコンなどは、目立たせない工夫を
そしてリフォームや模様替えをしていくときに大切なのが、何を目立たせ、何を目に入りにくくするかということだという。 「目立たせたくないもののひとつが家電です。 私にとってテレビ、冷蔵庫、エアコンは自分の空間に対する美意識やこうありたいという世界観を妨げるものになってしまうので、どうしたらそれが目立たないようにできるかという観点でレイアウトを考えました。 特にテレビはリビングに入るとすぐ目に入るところに置きがちですよね。でも、そうするとリビングは『テレビの部屋』になってしまう。どんなにインテリアに工夫を凝らしたとしても、テレビのあの真っ黒い画面が部屋の印象を支配してしまうんです。
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