PE業界の常識を覆すカーライルの働き方改革。出社は午後4時まで、男性も「子育て」で仕事ブロック
「男社会」で「ハードワーク」の印象が強いPE(プライベート・エクイティ)業界に、変化が起きている。 【全画像をみる】PE業界の常識を覆すカーライルの働き方改革。出社は午後4時まで、男性も「子育て」で仕事ブロック 改革を進めるのが、世界で投資活動をするカーライル・グループだ。最近ではケンタッキーフライドチキンを運営する日本KFCホールディングスへのTOBの発表や、日本に特化した4300億円の新ファンドを立ち上げたことでも話題を呼んだ。 カーライルでは投資部門の女性社員を増やしており、ハイブリッド勤務で出社のコアタイムは午前10時から午後4時までで、多くの社員は夕方6時には退勤する。 育休を1カ月間しっかり取る男性社員もおり、業務カレンダーを「保育園の送迎」や「料理」でブロックすることも当たり前だという。 また自社だけではなく投資先企業にも独自の人脈を活かして女性取締役を送り込むなど、ダイバーシティの支援に取り組む。 そんな同社でマネージングディレクター兼CDEIO(Chief Diversity, Equity, and Inclusion Officer)を務めるカラ・へランダーさん、そして日本オフィスで女性社員の採用や、子育てと仕事を両立しやすい環境整備に取り組み、それぞれが2人の子育てもしているマネージングディレクターの三井麻紀さんと寺阪令司さんに話を聞いた。
運用総額の2分の1を女性が担当、多様性は利益に直結する
ヘランダーさんの前職は世界最大の資産運用会社のブラックロックで、同社でもダイバーシティ戦略を率いてきた。 ヘランダーさんはカーライルで進めてきた女性の登用について、こう振り返る。 「グローバルで見ると、カーライルのシニアメンバー(上級管理職)の25%が女性です。PE業界の平均が14%だということを考えると、これは大きな進歩だと考えています。 また運用資産総額の約2分の1を女性の投資担当者が運用しており、これもPE業界では画期的です。 私たちが分析したところ、投資チームにダイバーシティがあるほうが、より良い投資の意思決定ができることも分かっています」(カラ・へランダーさん) 多様性は利益に直結している。カーライルが投資先企業のパフォーマンスを3年間にわたって分析したところ、取締役会に女性や人種的マイノリティが2人以上いるなど多様性がある企業は、そうでない企業に比べて年平均の利益成長が12%近く高かったという。また取締役会に多様性がある企業はそうでない企業の5倍の速さで利益成長し、女性らダイバーシティある取締役が1人増えるごとに、年間利益成長率も5%増えていた。 カーライルでは女性を増やすため、自社の採用において候補者のうち最低2人を女性、もしくは人種的マイノリティにするという目標を設けている。 日本オフィスでも女性の採用を強化しており、特に注力するのが、業務のハードさで知られる投資チームだ。 日本の投資メンバーは2024年5月末時点で25人おり、うち女性は6人。24%が女性の計算だが、2025年には30%まで引き上げる目標を立てている。 「PEは30年ほどの歴史しかない、比較的に新しい産業です。男性たちが業界を立ち上げ、知人を引き入れながら拡大してきました。あまりにも急成長したため、ダイバーシティや次世代の育成について考える余裕がなかったのだと思います。 だからこそ今、より多くの女性を業界に迎え入れることが必要なんです。 もちろん女性を採用したら終わりではありません。重要なのは、彼女たちが成功できる環境を作ること。なので私たちは女性を社内で育成することに力を入れています」(カラ・へランダーさん)