PE業界の常識を覆すカーライルの働き方改革。出社は午後4時まで、男性も「子育て」で仕事ブロック
男性管理職も子どもの送迎や料理でカレンダーをブロック
日本オフィスで上級管理職としてこうした取り組みを率先するのが、マネージングディレクターとして製造業・一般産業分野への投資チームを統括する寺阪令司さんだ。 ミーティングは全員参加のものを極力減らして、各自に分担して任せる。その代わりに会議の情報は社内チャットなどでしっかり共有し、オンライン会議もフル活用しているという。 「仕事はきついのですが、最大限の柔軟性をもって取り組めるよう心がけています」 そう話す寺阪さん自身も、中学生と高校生の子どもを育てる父親だ。昔は「幼稚園の送迎」、子どもが大きくなった今も「料理」など、業務カレンダー上で家族のための時間をブロックしている。 「私のような立場の人間が積極的にそうする(私用で仕事時間をブロックする)ことで、『みんなもいいんだよ』とシグナルを送りたいと思っています。 “絶対にこのタイミングでなければならない”仕事の予定なんて、実はそんなに多くないですから。 肩書きに関係なくお互いの時間を尊重しようというのは、カーライルでは当たり前で大切なカルチャーになっていますね」(寺阪氏) こうして上司が率先して体現している影響か、カーライル日本で働く幼い子どもを育てる30代の若手メンバーは、女性も男性も、幼稚園の送迎など子育てのための時間は仕事をブロックすることが増えているそうだ。 夕方6時にはオフィスを出て子どもを迎えに行き、子どもの食事とお風呂を済ませた後で、再び夜9時や10時から仕事を再開する人が多く、夜にメールやチャットが盛んになると、管理職のシニアメンバーは「もう子どもが寝たんだな」と安心するという。 中でも寺阪さん、三井さん共に目をみはるものがあるというのが、ここ数年での社内の若い父親たちの育児への意識の変化だ。男性も育児休暇をしっかり1カ月間取る人が出てきているそうで、寺阪さんが2023年に手掛けた買収では、男性部下の妻の出産が最も忙しい時期に重なったが、「しっかり休んで」と送り出した。 「女性の社会進出」のコインの裏表にあるのが「男性の家庭参加」だが、PEファンドで働く男性でもここまでコミットしている(できる)とわかれば、勇気をもらう人も多いだろう。
竹下 郁子