PE業界の常識を覆すカーライルの働き方改革。出社は午後4時まで、男性も「子育て」で仕事ブロック
子育てに後ろめたさ感じた過去、後輩には引き継がない
女性が仕事で成功する上で大きな壁になっているのが、子育てとの両立だろう。 カーライル日本で女性として唯一、マネージングディレクターにのぼりつめた三井麻紀さんは、同社で初めて妊娠出産を経験した女性でもある。 現在は高校生と大学生の子育てをしながら、投資家からの資金調達などを担当しているが、昔は女性ならではの苦労も絶えなかったそうだ。 「私だけ名刺をもらえなかったり、通訳だと勘違いされたり。 子どもが幼いうちはクライアントとの会食は最小限にしていましたし、保育園の送迎すら後ろめたく感じていたものです。夜の電話会議では赤ちゃんが泣き出してしまわないか、ヒヤヒヤしていました」(三井さん) 葛藤を抱える日々に転機が訪れたのは、アメリカオフィスとの夜の電話会議でのこと。隣で寝ていた赤ちゃんが泣き出してしまい、思わず抱き上げて泣き声が電話口にひびく中でかけられた言葉は「あら、ベイビーがいるのね」。 仕事相手は子どもをケアしながら会議に参加することを、全く気にかけていなかったのだ。三井氏は「仕事と子育ての両立で私が感じていた罪悪感の原因は、恐らく文化的なものだったのでしょう」と話す。 「今の私の使命は、後輩たちに同じような思いをさせないことです。直属の部下の女性には2歳の子どもがいますが、『オフィスにいて大丈夫?』『ストレスを感じたら言って』と、いつも声をかけています。 お子さんが熱を出したら『帰って大丈夫。出社する必要は全くないから、在宅勤務に切り替えてね』と。悪いことをしているわけではないのだから、当然のことです」(三井さん)
会議を30分ずらすだけで、人生が大きく変わる社員がいる
加えてCDEIOのへランダーさんが勧め、実際にカーライルでも実践しているのが、プロジェクトに入る前にチームメンバーで集まり、子育てや介護など、私生活で自分が果たしたい責任、ないがしろにしたくないことについて打ち明け、共有し合うことだ。 ともすれば社員個人の「仕事の壁」「隠したいこと」になってしまいがちなことを、チーム全員で「配慮し合う」べきことがらに昇華させるのだ。 「私たちには皆、人生で追求したいことがありますよね。組織はそれに対してどんな協力ができるかを考えるのです。 たとえば定例会議を30分ずらすだけで、誰かの人生を大きく変えることができるかもしれません」(カラ・へランダーさん) 会議の開始時間があと30分早ければ、保育園の迎えに間に合ったのに……。つまり30分違えば「会議に最後まで参加できたのに」と後ろ髪をひかれながら、帰路を急いだことがある人は少なくないだろう。 小さな変化を受け入れる姿勢がチームにあるかどうかが、職場環境を大きく変えるとヘランダー氏は指摘する。