【ヴェルサイユへ行こう!】マリー・アントワネットの「2つの寝室」に人気インテリアコーディネーター伊藤直子さんが注目した理由
マリー・アントワネットいえば、18世紀フランス革命のきっかけをつくったといわれるほどの浪費家として有名です。しかし一方では、その類い稀なトレンドセンスで当時のヨーロッパ貴族のファッショントレンドを起こし、インテリアにおいても「アントワネット風」をつくりました。 ここではアントワネットが過ごした2つの寝室を通して、その王妃という地位の影に隠された女性としてのプライベートな姿に迫りたいと思います。 【写真集で見る】ヴェルサイユ発・マリー・アントワネットの「2つの寝室」に注目!
彼女のファッションは常にヨーロッパじゅうの王室貴族の憧れで、ドレスやヘアスタイルは常に新しい流行となり、ヴェルサイユやパリの貴婦人たちは、こぞって彼女のファッションを真似ていたそうです。まさに現代でいうところのインフルエンサー。 その彼女の肖像画を実母であるオーストリアのマリアデレジアが見て、あまりの派手さに心を痛め、「王妃たるもの質素な服装をしてこそ、人々の尊敬を集めるのです」と戒めの手紙を何度も送ったというのですから、今も昔も、そして王家でさえ、派手好きな娘に対する親の心配の気持ちは同じなのですね。 でもそんなアントワネットだからこそ、インテリアでもそれまでにない新しい様式をつくり出せたのです。
マリー・アントワネットの寝室1:ヴェルサイユ宮殿の豪華なベッドルーム
アントワネットが14 歳でフランス王家に嫁いできた頃は、義理の祖父にあたるルイ15世が統治していました。 ルイ15 世の愛妾ポンパドール夫人やデュ・バリー夫人らを中心に、華やかな貴族の婦人達がおしゃべりに花を咲かせ、音楽を奏でていたサロンのインテリアは、ロココ様式と呼ばれ、それ以前のバロックの男性中心の尊大さとは打って変わって、優美で女性的なインテリアが花開いたのでした。 もちろん若き日のアントワネットの寝室もバロックの名残りも感じさせるロココ様式。 ロカイユ(岩や貝殻)に着想を得た優雅な貝殻紋様が壁や家具にたっぷり施され、カブリオールレッグと呼ばれる猫脚の椅子やコモドなどの家具が主流。このため息の出るようなインテリアはフランス発祥としてイギリス、ドイツなどヨーロッパ中の宮廷や貴族に大流行しました。 今でも、ロココ様式というと、西洋のクラシックインテリアの代表のようなイメージで、その優美さは女性をも虜にしています。 アントワネットの寝室も、現代のヴェルサイユ宮殿で再現され、その優美さ、豪華さで訪れる観光客を魅了しています。 実は、ヴェルサイユ宮殿のアントワネットの寝室は、歴代の王妃が出産の際に、貴族達を前に公開出産がなされた場所。 当時若かったアントワネットは、優雅なインテリアやファッションのなかに暮らしていても、宮廷での決まり事だらけでプライバシーがない生活が、どれほど彼女の素直で純真な心を蝕んでいったか、想像に難くありません。