アップル「EV開発から撤退」の意味と、次なる探索 「iPhoneと車との連携強化」は新たな段階に入る
2022年モデルのテスラ・モデル3を日々運転していても、実感するところだ。 例えば東京から冬の苗場のおよそ200km往復では、95%で出発し、往復の道中、高崎で5分充電するだけで、15%のバッテリーを残して帰宅できた。雪道での修正は素早く、少し姿勢を崩しても破綻しない制御の優秀さに驚かされた。アップルカーが出るまでもなく、iPhoneとの連携は完璧だった。 iPhoneがテスラのカギとリモコンとなり、乗り込む前にエアコンとバッテリーを暖めておくことができる。iPhoneを持って近づけばカギが開き、iPhoneのカレンダーに登録されているホテルのチェックイン予定から、乗り込んだときに自動的にナビをセットしてくれる。
移動中は車載の大画面だけでApple Musicを楽しみ、iPhoneに届いたメッセージを音声で聞き取り声で返信しながら、同行する友人と連絡を取り合った。 テスラ車は、iPhoneとの十分な連携が実現しており、アップルカーを待つまでもない。現在の世界で最も人気のあるEVの現実であり、アップルが発揮しうる強みも、顕在化しないと考えている。 アップル自身はEV計画から撤退したが、iPhoneと自動車との連携強化は、2024年に新たな段階に入る。
今年発売されるポルシェ・マカンやアストンマーチンに実装される次世代CarPlay(iPhoneとクルマのインフォテインメントシステム=情報取得と娯楽体験を連携させる機能)は、自動車メーカーのデザインや雰囲気を前面に押し出しながら、iPhoneとコラボレーションする仕組みとなった。 より自動車のことを理解するという点においては、アップルが自分たちでEVを作ろうとしたことは、完全なムダではなかったかもしれない。
■次に待ち構えるのは? 少し中途半端な存在だったアップルカーの計画がなくなったことで、アップルは本業であるスマートフォンとコンピューター、ウェアラブル、ホーム、サービスから、次のビジネスの柱を生み出すことになる。 Apple Watchでは、「健康」というあらゆる人の関心事により深く踏み込みながら、早期に症状を察知し、スムーズに医療につなげていく。これにより、iPhoneとApple Watchのセットが、生活に欠かせないものとしての存在感を強化する。