まるでSF! 日本発、「犯罪予測」の最前線! 過去の犯罪を分析し、未来の悲劇を防止する
また、データが不足している、あるいは皆無の地域の犯罪であっても、機械学習の一種である『転移学習』(データがあるエリアで学んだモデルをデータ不足のエリアに適用する技術)という仕組みを用いることで、高精度な予測を提供することができるようになっています。 このように、私たちは独自のテクノロジーを使い、時間・空間の両面のデータから詳細なエリア分析を行なうことで、『この道ならば○時に犯罪が起きやすい』といった高精度な予測を実現しているのです」 実際の運用現場では、こうした予測情報に基づき、犯罪発生の確率が高い地域を重点的に回るパトロールのルートを作成。これまで"現場の勘と経験"に頼っていた治安維持の活動をデータ分析の結果から効率的に行なうことで、ベロ・オリゾンテ市で実証されたような驚異的な犯罪抑止効果を上げている。 現在はブラジルの複数のエリアでも実証実験が進んでおり、ホンジュラス国家警察でも同様の取り組みを行なっている。 ■物理学の研究者からベンチャー起業家に データ分析による犯罪予測を専門とする企業は、欧米にはいくつか存在するものの、日本ではSP社が初だという。しかも、その精度の高さは企業規模で大きく上回る海外のトップ企業と比較しても引けを取らない。このユニークな日本企業は、なぜ生まれたのか。 「子供の頃から自然科学が好きで、数学で自然現象を理解したいと思っていました。東京大学大学院では統計物理学で博士号を取得しました。『Singular Perturbations』という社名も、私が専門にしていた『特異摂動』という物理学の研究手法の英語名から名づけています。 当初は研究者を目指していたのですが、『一生をかけて理論物理の研究を突き詰めても、自分が社会に与えられる影響は小さいのではないか』と疑問を持つようになって。もっと研究成果を社会に還元したいと思うようになりました」 今後のキャリアについて悩んでいた14年、イタリアで暮らしていた梶田氏は、人生を変える出来事に遭遇する。 「ボローニャという街でスリの被害に遭ったのです。日曜の午後1時だったのですが、気がついたら財布を奪われていました。警察に相談したら、『その時間帯は現地の人は家で過ごすことが多く、観光客の割合が増えるので、もともとスリが多い』と教えてもらいました」