「我が国周辺でもウクライナ同様の事態が起きる可能性は否定できない」…吉田統幕長インタビュー要旨
――自衛隊の任務は増大している。超高齢社会では隊員の確保が一層難しくなる。難局をどう乗り切るか?
少子高齢化が進む中で、自衛官の採用に関して抜本的な改革を行わなければならない。その1つが女性自衛官の登用。現在、全自衛官に占める女性の割合は8・7%。これを30年度までには12%以上に上げていきたい。
女性が出産や育児で退職せざるを得なかった環境を改善し、男性の育児休暇を奨励するなど、働きやすい環境を整備していく。
人工知能(AI)や無人化装備などを積極的に導入する。民間企業の能力やOBなどの活用によって、現役の自衛隊員でなければできない業務に隊員を集約させていく。
――入隊からの数十年間を振り返り、隊員としての信念ややりがい、自衛隊の組織風土や思考、肌で感じる国民からの視線や期待をどう感じているか?
入隊した86年頃は、自衛隊に対する社会的な認知度は必ずしも高くなかった。(防衛大学校ではない)一般大から就職先として自衛隊に決めた時、周囲からは、やや奇異の目で見られた。この頃の自衛隊の広報は、自衛隊の認知度を上げることに重点が置かれていた。
状況が大きく変わるのは11年の東日本大震災。直後の世論調査で、自衛隊に対する国民の支持は9割を超えた。ただ、災害派遣や国際任務への認知度が高まる中、本来の任務である「防衛」に対する理解度は必ずしも浸透していなかった。
中国や北朝鮮の軍事活動が活発化し、次第に防衛に対する国民の関心が高まってきた。決定的な転機は22年のロシアによるウクライナ侵攻だろう。21世紀においてもこのような侵略戦争が起きるという衝撃が我々も含めて走った。
組織風土について。自衛隊幹部の主流は防大卒で、私のような一般大卒は傍流だった。自衛隊が一般大から採用していたのは、組織が同質性に偏らないようにとの配慮だと思う。
将官(将・将補)における女性の比率が2%に満たないことは深刻だ。